尾行
「それでは、また来ますね」
「はい、キリナさま! いつでも歓迎しますね!」
受付のお姉さんがギルドの入り口でぶんぶんと手を振って見送ってくれる。
お金大好きお姉さんに、膨大な額の寄付をすれば、気に入られるのも当然だった。
お姉さんはお金が大好きではあるが、もらったものを自らの懐に入れたりはしない人だ。ギルドの設備が新しくなったりするのなら、それはそれで良いのかもしれない。
まだまだ稼いだ報酬金も残っているし、こういう使い方が一番みんなのためになるのかも。
そう思いながら、私はエルバルクの家に帰ろうと城下町を歩いていたのだが。
……さっきから、うっとうしい連中が背後についている。
冒険者ーーいや、暴力を得意とするただのクズな男たちだ。
貴族だとわかる格好でうろついていたから、目をつけられたのか、ずっと一定の間隔で尾行されている。
向こうは、私をただのお嬢様だと侮っているのか、それともそれが実力なのかわからないが、大雑把な追跡をしてくる。気づかれていないと思っているようだ。
『敵意把握』で赤くなっているので丸わかりだが、それ以前にスキルを使わなくても気配で察知できた。
貴族の娘をさらって身代金を要求。
ありそうな話だ。
私はわざと人目のない路地裏へと入っていく。
それを不自然だとも感じないようで、むしろチャンスだと思っているらしい男たちは、足音がこちらに聞こえていることも知らずに、一気に距離を詰めてきた。
私は背中を向けたまま、立ち止まって言う。
「あなたたち……もう帰ったら?」
せめてもの警告だったが、男たちは黙って距離を詰めてくる。
仕方がない。
赤フードはないが、一瞬でけりをつけよう。




