対人戦の基本
対人間戦闘は、モンスターよりも気をつけなければならない点が多い。
モンスターはその種族を見れば、大体どんな技を繰り出すか予想ができる。
だが、対人戦においては、外見だけでは相手の取得しているスキルを把握することはできない。
そのため、対モンスター戦の時よりも思わぬ攻撃を食らう可能性が高いということだ。
残念ながら、相手のスキルを読み取ることができるようなスキルは、私も取得していなかった。
そもそもこの世にそんなものが存在するのかどうかも謎だ。
そのため、私はまず警備長たち三人をよく観察した。
三人でパーティーを組んでいる……ということは、お互いを補い合うスキルを持っているかもしれない。
そう思った時、人相の悪い二人が動いた。
「兄貴! 攻撃強化っす!!」
「兄貴! 防御強化っす!!」
同時に叫ぶと、警備長に向かって赤と青の光が飛んでいく。
それを受けた警備長の身体は輝き、明らかにパラメータが強化された様子だ。
なるほど、『攻撃強化』に『防御強化』。
それぞれ、攻撃と防御に関するパラメーターを上昇させる効果を持つスキルだ。
複数のバフスキルを一人に重ね合わせていくことで、強力なアタッカーを生み出す戦法らしい。
そうなると、警備長が取得しているスキルは――相手に大ダメージを与えるためのスキル技といったところだろうか。
「――悪いが、一撃で決める」
警備長が私をにらんで構えた剣が黒色に染まった。
……あれは『暗黒裂傷』と呼ばれるスキルだ。それもかなりの高レベルだろう。
スキルによって黒く染まった武器で切られた傷は、自ら広がっていくという最悪な効果を持っている。
いかにも悪人が好んで使いそうなスキルだ。
「だ、大丈夫なんですか……赤フードさん。あのスキル技、警備長が一度だけ、侵入した賊に対して使ったのを見たことがあります。そのあと……賊は酷いことに……」
背後のエルスが不安げに言う。
確かにきちんと対策ができていないと、『暗黒裂傷』はかなり厄介なスキルだ。
「……うーん」
私はどうするか考える。
このまま、真正面から迎え撃ってもいいが……もっと効率的な方法もある。
そして、私は選択した。
警備長の『暗黒裂傷』。
その攻撃をわざと受けてみよう、と。




