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研究資料保管室の人影

 地下施設はたくさんの小部屋が並んだ物々しい空間になっていた。しかし、地下とは思えないほどに明るい。

 大規模な光源を生成するようなスキルが使われているのだろう。


 この世界はとにかくスキルによって支えられている。

 みんなの生活を快適にするために、専門スキルに特化した職業の人間もたくさんいる。


 一般人は汎用スキル3、専門スキル2くらいの割合で持っているのが普通だが、そういう専門職の人間のおかげで、この明るさのような便利さが得られていることを忘れてはならない。


 もちろん私だって探せば、同じようなスキルを覚えているだろうけれど、こういうものは取得している人数が大事なのだ。

 私一人では王国の全てを快適な空間にすることはできないのだから。


 わざわざ他人が選ばないスキルを取得して、みんなのために貢献してくれている人には頭が下がる。


「こんな方法で地下におりるなんて……」


 床の崩壊に巻き込まれたエルスは絶句していた。


「大丈夫、あとで床を元に戻すこともできるスキルだから」


「……? これはただの『床貫通』ではないのですか? 元に戻すこともできるスキル……そんなものあったかな……」


 私が適当に言った言葉をもとに、真剣に考え出すエルス。

 ちょっと申し訳ないけれど、今口にしたのは嘘だ。


 床を修復する時には別のスキルを使う。

 だが、そんなことがバレたら、それだけでスキル枠を二枠も消費していることになる。


 私は床の解体と修理だけが得意な、意味のわからない冒険者として記憶されてしまうだろう。そのため、あまり多くは説明しないことにした。


「この地下で研究データが保管されている場所はどこ?」


 まだ考えているエルスに私は聞く。


「えっと……この先の研究資料保管室ですが……ここは警備も厳重です。何もないと思いますよ?」


「それは行ってみればわかるよ」


 エルスの案内で私は研究資料保管室に足を運んだ。


 小さめの書庫のようなものかと思っていたのだがーー研究データが膨大なカンガード家の研究資料保管室は大広間にたくさんの背の高い本棚が並んでいるという、王立図書館も顔負けの広い空間だった。


 そして、私はその部屋で。


 犯人たちを見つけた。


「……ほらね」


 私は本棚から貴重そうな資料の紙束を根こそぎ抱え、袋に入れている三人の男を見つけた。

 本棚には「スキルレベルアップ関連」と書かれている。予想は完全に的中だ。


「な、な、何をやっているんですか! 警備長(、、、)!」


「エルスさま!? くそ、予想外の展開だぞ!」


 その中の一人、やっぱりグルだったらしい警備長と呼ばれた男は、二十代前半のとても顔がカッコいい青年だった。


 私の好みではないけれど、好きな女性は多いだろう。

 と、そこまで考えて、エルスがなぜ無条件に警備長を信頼していたのか理由がわかった。


「エルス……あなたも年頃の少女だったのね」


「な、なんですか!! いきなり馴れ馴れしく!!」


 思わず普通の口調で呟いてしまって、エルスに怒られる。

 慕っていた男性に裏切られるというのも傷つくだろう。


 ここは私が、事件を丸く収めるしかない。

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