努力の人
実はスキルにも種類がある。
パラメーター向上系のスキル。
特定の現象を起こすスキル。
特別な攻撃を行うスキル技。
相手に干渉するスキル。
これら全ての総称が「スキル」である。
正直、五枠だけだと本当に足りない。
何かしらの役割に特化させたり、全て汎用スキルを取得してパラメータを底上げしたり、という選択肢があるが、スキル取得適性やスキル自体のレベル上限を考えると、それほど大きな差異は生まれないのが現実だ。
そのため『騎士剣の奇跡』のような、ある意味お得なスキル盛り合わせみたいなレアスキルはとても重宝される。
『騎士剣の奇跡』でパラメーター向上系スキルを一つの枠に収められると、他の四枠はスキル技などに使える。
だけど、『幻惑防御Ⅱ』のようなスキルも入れているということは、アルレア本人が言っていた通り、『騎士剣の奇跡』以外のスキル取得適性にはあまり恵まれていないのだろう。
私が三体の紫獣人を全て倒してから振り向くと、ちょうどアルレアも敵を倒し終わったようで、少し苦い表情で笑ってみせた。
「本当に強いんだな、少し半信半疑だったんだけど」
「私が強いのは、ただ運が良かったから。感心するようなことじゃない」
アルレアにはもう女とバレているので、一人称は普通に「私」を使うことにした。
「運、か」
一緒に戦ってみてわかった。
アルレアは努力の人だ。『騎士剣の奇跡』というレアスキルには恵まれたものの、それに驕らず、自らを強く鍛えているからこそ、パラメーター向上の効果を生かせている。
私はそんなに努力をしてきたわけではない。
ただ運が良かったから。
他の人にはない、スキル枠が無限になるという超レアスキルを手に入れたから強くなっただけだ。
そんな風に少し自虐してみたところで。
「そんなことはないと思うけど、たとえ本当に君が運だけで強くなったのだとしても」
アルレアは私の目を見て続ける。
「その力を人助けのために使おうと考え、行動に移している時点で、やっぱり君は強い人だよ」
……今までそんな風に考えたことはなかった。
努力をして強くなった人に対して、私は少し罪悪感を覚えていたのかもしれない。
だが、そうやって笑いかけてくれるアルレアを見て、私はこれからも胸を張って冒険者をやっていける気がしたのだった。