信じる
「…生きてる?」
(死んだはずなのに体が動く…?)
目を開けるとあの公園から見える夕焼けが目に入ってきた。
「…大丈夫?」
(マナの声がする…あれ?でも俺寝っ転がってるよな…
まさか…!?)
後頭部の感触で何となくわかった。
今俺はマナの膝の上に寝ている…
これは…膝枕…
(俺は幸せか!!)
「大丈夫だけど…まだこの体勢でいても良いかな…?」
マナはハッとし、頬を赤らめて立ち上がった。
「いてててて…」
マナがいきなり立ったため頭をぶつけた。
「ご、ごめんなさい!!」
「いや…俺の方が悪かったわ…」
頭をおさえると微かにのこるあの時の痛みを思い出した。
「ど、どうしたのマサ?」
「…いや?」
あの時の銃声…俺を殺したあいつの冷酷な目。
そして…微かだが聞こえてきた…マナの声…
「汗ひどいよ?」
冷や汗が…止まらない…
恐怖でまた足が震えて立ち上がることも出来ない…
「だ、大丈夫!?足…震えてるよ?」
「だ、大丈夫…少し休めば…」
何とか立ち上がってベンチに座り込んだ。
「ふぅー…」
マナが買ってきてくれた水を飲んだ。するとマナが問いかけてきた。
「落ち着いた?」
「うん、もう大丈夫」
「良かった…」
マナは少し安心したようだった。
(俺は全くもって安心できていない。
俺を殺すように指示したのは…マナなのだから…
しかし…あれは夢なのだろうか…現実とは限らない。
第一銃なんて持っていたら銃刀法違反で捕まるだろう。
過激な夢でもみたのではないだろうか。
というより、別世界から来たなんて言うシオンのせいかもしれないな、別世界なんてないだってここが本当の世界なんだから)
そんなことを考えているとマナは「迎えが来たから帰るね」と言い公園を出ていった。
公園の前には高級車が止まっていた。
(マナは金持ち一家のお嬢さん…だったよな)
そして車から一人の女性が降りてきて外でマナとこちらをみながら話をしていた。
すると女性は俺の方をみてお辞儀をしていった。
顔を上げた一瞬収まっていたはずの震えがまた始まった。
「…あいつ…だったよな…」
あのバーを襲った犯人。
まさしく車から降りてきた女性と顔が一致した。
そしてマナが車に乗り込み帰っていくのを見計らい、すぐに家に帰って布団に入った。
なぜか今日は大好物のカレーだと言うのに一口も食べようとは思わなかった…
翌日マナに昨日お辞儀してきた女性が誰なのか聞くとマナの家で働いてる使用人らしい。
小さい頃からマナの面倒をみていてながい付き合いだという…
その日の放課後またシオンと喫茶店へ行った。
「…前シオンが言ってた、別世界なんて本当にあるのか…?」
そう訪ねるとシオンは真剣な眼差しでこちらを見つめて言った。
「…あるよ」
別世界のことを単刀直入に聞いてみた。
「…シオンの知り合いにローヅとつよしって人はいる…?」
すると顔を強ばらせてシオンは言った。
「…もしかしてマサくん…別世界に行った?」
「あぁ…行ったよ…そして…」
(この事を言ってもいいのだろうか…
でも言わないと…何も始まらない…)
「殺されてきた」
「やっぱりか…」
(やっぱりか…?)
「…どういう意味?」
「私もね…たまに別世界に行くけど絶対ローヅさんとつよしくんと一緒に殺されちゃうんだよ…そして気づいたらこの世界に戻ってきてて…それの繰り返しで…」
(繰り返し…?)
「って言うことは…シオンは別世界に行けるのか?」
「うん…でもさっきいった通りの事が起きるだけなんだけどね…」
シオンは涙を流した。
「もう…どうすればいいんだろうね…」
シオンが泣いているところをみると心が痛くなる…
「ならさ…俺がその未来を変えれば…シオンは別世界でローヅさんやつよしさんと殺されずに会えるんだね?」
「…多分」
「…なら俺が…行ってやる、未来を変えてやるだから…
俺を信じてくれ…」