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9 生活習慣改善指導 睡眠編(仮)

サブタイトルは仮名にしておきます。あんまり良いのが浮かばなかったので……。

 魔王様のお仕事が一旦落ち着いたとの事で、私と師匠は魔王様の待つ部屋へと呼ばれた。


「失礼いたします。」

「待たせたな。」

「いえ。」


 入ってすぐに、にこやかな顔の魔王様に出迎えられる。私が自分の身長と同じくらいの抱き枕を持っているのを見ると、少し眉が上がったように見えた。


「……それは?」

「先程作りました。抱き枕です、どうぞ。」


 レイさんを通して魔王様にお渡しする。ちょっと困惑顔だけれど、何も言わずに受け取ってくれた。


「……良い匂いがするな。」

「はい。眠りを誘うよう、落ち着いた気分にさせる香りを調合しました。」

「なるほど……。しかし、俺はこの……抱き枕?は使ったことがないんだが……。」


 少し恥ずかしそうに魔王様は呟いた。

 別に抱き枕は恥ずかしい物でも何でもないと思うのだが……。


「抱き枕はとても役に立つと思いますので、是非使ってください。使い方についてはこの後説明させていただきます。」

「……そうか。」


 渡す物も渡したので、勧められるまま魔王様と向かい合うようにソファに座った。


「では、我が主人の不眠症解消のための、生活習慣改善案を説明していただきましょう。」

「お前が仕切るのか……。」


 レイさんがノリノリで進行役をしてくれるらしい。魔王様がツッコミを入れているが、構わず説明させてもらおう。


「ではまず、レイさんから聞いた、魔王様の現在の生活習慣の中で問題点となるものを挙げさせていただきます。」

「あ、ああ……。」

「朝、起きてから寝るまでの間、ほとんど日光を浴びていない。コーヒーの飲み過ぎ。寝る直前までお仕事、又は読書をしている。寝る際、部屋が明る過ぎる。私が気になった事は以上です。」


 私が聞いた中で良くないと思った点はこのくらい。何が良くないのか、魔王様に説明する。


「日光を浴びない、というのは生活のリズムを崩す原因でもあります。一日は二十四時間で回りますが、体は二十五時間周期で一日と認識しているんです。この一時間のズレを直してくれるのが日光です。朝、日光を浴びる事によって、リズムをリセットして夜に体が自然と眠る状態になってくれます。なので、毎朝、日光を三十分以上浴びるようにしてください。朝食を今朝のような日の光が入るような部屋で摂られると良いと思います。」


「ふむ。」


「次に、コーヒーの飲み過ぎです。一日に六杯は飲むとお聞きしました。しかも、夜も飲むそうですね。コーヒーは、集中力を高めてくれる効果がありますので、飲む事を止めはしません。しかし、それは興奮作用でもあります。寝る四時間前にはコーヒーの摂取は止めるようにしたほうが良いでしょう。一日に飲む量も三杯程度に抑えたほうが良いと思います。」


「興奮……。」


「それから、寝る直前までお仕事、又は読書をしている、という点です。寝る前まで神経を使う事をしていると、いつまで経っても体は眠る状態に入れません。眠る一時間前には読書もお仕事もやめて、体が眠る状態になれるように気遣ってあげるべきです。」


「自分の体を気遣う、か。」


「はい。最後に、部屋が明る過ぎる事です。眠る時に明かりが強過ぎると、目からの刺激で脳が活性化されてしまいます。眠りたくても目が冴えてしまう状態になるので明かりは極力消してください。どうしても明かりがないと眠れないようでしたら、頭の近くではなく、足元の方に置くか、仕切りなどを使って顔に直接光が当たらないようにしてください。目からの刺激を減らす事で良くなるはずです。」


「明かりがないと眠れないわけではないから、これからは消すようにしよう。」


「気になった点の説明と改善案を説明させていただきました。何かご質問はありますでしょうか?」

「いや、大丈夫だ。」


 私の説明はきちんと聞いていただけたようだ。今のところ、改善案を受け入れてくれている。

 さらにここからは、新しく生活に取り入れてもらう案だ。


「では、ここからはより眠る状態に入りやすくするための、更なる生活習慣の変更点です。」

「ま、まだあるのか……。」

「はい。」


 一呼吸置いて、話を続ける。


「基本的に寝る前の習慣についてです。お風呂は寝る一時間前に入る事。または、眠る前に飲んでいたコーヒーをホットミルクに変えて飲む事。そして、先程の抱き枕を使い、横向き姿勢で寝てもらう事、です。」

「ホットミルクに抱き枕……子供のようではないか?」


 あぁ、魔王様は、抱き枕は子供がする物だと思っていたのか。ホットミルクにも抵抗感があるらしい。

 ……美味しいのに。


「そんな事はありません。両方共眠るのにとても役に立つんです。大人でもそれは変わりありません。ただ、ホットミルクがお嫌でしたら白湯でも良いですよ。」


 白湯でも良いと聞いて、あきらかにホッとした顔をする魔王様。そんなに嫌か……。

 とりあえず何故ホットな飲み物なのか説明しておくかな。


「大事なのは体を温める事なんです。お風呂の時間指定もそうですが、体内の深部温度が下がる時に人は自然と眠くなるのです。なので、お風呂から上がって体の中の温度が下がる、飲み物を飲んで温まった体が冷えていく、という体温の変化をわざと作って眠りやすくしよう、という事なんです。」

「なるほどな。」

「さらに、なかなか寝付けない人は横向きに寝てみる事をおすすめします。気道が確保されて呼吸がしやすくなるんです。ただ、そのまま横向きになると、上側になる腕が辛くなる場合があるんです。そこで、抱き枕を使っていただくと楽に横向きになれる、というわけです。足も同様です。」


 きちんと考えられているんだな……と呟くと、魔王様はこちらの目をしっかりと見て頷いた。


「わかった。ヴィリア殿の言う通りに、今日から生活習慣を直してみよう。」

「一日で劇的に変わるかと言われるとそうではないかもしれませんが、毎日続けてください。きっと変わっていくはずです。」

「ああ。」

「ご安心ください!このレイ、必ず毎日続けられるようにお手伝いいたしますので!」


 横からレイさんが自信満々に声をあげてきた。目が爛々としている。馬車の中での熱い語りが蘇ってくるようだ……。

 そんなレイさんを魔王様はジト目で見る。


「いや……お前に生活の全てが筒抜けというのは若干恐ろしくなってきた。なんでだろうな……。とりあえず、夜は自分でしっかり管理するから、お前は執務が終わったら俺に近づくな。」

「そ、そんな……!」


 さっきとはうってかわって、絶望した表情になるレイさん。コロコロ変わってちょっと面白い。



 これで魔王様への生活指導は終わりだ。レイさんがしっかりメモに取っていたし、後は自分で頑張っていくしかない。


「……よくなると、良いですね。」

「ああ、感謝する。」


 思わず呟いた言葉に、微笑まれてしまった。さらりと揺れた黒い髪と、優しげに細まる目元に、胸がざわついたような気がした。……なんだろう、不整脈かな?



「では、これで失礼いたします。」

「ああ、近いうちに経過を報告させて貰う。」

「はい、お待ちしております。」

「うんうん。アズロさん頑張ってねー!」


 久々に師匠が喋った。ニコニコと手を振っている師匠を見て、ここだ!と思った。


「師匠も一週間、頑張ってくださいね。」

「……え?」

「今日から一週間、薬草園でお仕事ですもんね。」

「ええ?今日からなの!?」


 驚愕する師匠。レイさんがおずおずと会話に入ってくる。


「えっと……まだ小屋は建っておりませんが……。」

「大丈夫です。テントがあれば一週間くらい師匠は生きられます。」

「うぅ……確かに生きられるけど……。木のお家、楽しみだったのにー。」

「師匠、お店を開く上で一番大事なのは薬草です。そしてお店を開く事になった原因は?」

「はい!僕です!頑張ります!」

「よろしい。」


 師匠の敬礼する機敏な動きに満足して頷くと、魔王様の笑い声が聞こえてきた。


「ははは。では、早く小屋を用意してあげねばな。」

「そうですね。手配は済んでおりますから、後ほど発破をかけておきましょう。」


 こうしてお城でのやる事を終えた私は、師匠にテントを持たせて城外に蹴り出し、歩いて木の家まで戻った。



 長い一日だったような気がする。

 お店が開くようになったら、こんな毎日が続くのだろうか?


 森の中の家で暮らしていた時とは一日の濃さがあまりにも違くて、少し心配になった。

 どうでもいいお薬の話 2


 今日はカフェインについてです。


 作中にもある通り、カフェインは興奮状態にします。自律神経の交感神経と副交感神経で言うと、交感神経が優位な状態になる、という事ですね。

 交感神経が優位な状態になると……。


 ・血圧が上昇する

 ・胃液の分泌が少なくなる

 ・腸の活動が緩やかになる

 ・口が乾きやすくなる


 という、ようは緊張すると起こる状態になります。

 その分……。


 ・集中しやすくなる

 ・瞳孔が開き、視覚情報が入りやすくなる

 ・眠気が飛ぶ


 というようないつでも動ける、アクティブな状態になります。

 なので、カフェインを摂るとお仕事が捗るんですね。


 そのほかに鎮痛作用もあります。頭痛薬にACE処方と書かれた物がありますが、そのCがカフェインの事を指しています。



 ただ、カフェインは摂りすぎると中毒を起こします。

 中毒の症状は手足の痺れや吐き気、動機など。ただ、重い中毒症状は意識を失う、心肺停止もあります。


 中毒にならずに比較的安全に飲める杯数が大体三杯程度です。また、時間を開けて飲む事をおすすめします。

 一気に三杯飲んだら、血中の濃度も一気に上がって結局中毒症状が起こってしまいます。


 先ほども書いたように、カフェインはお薬にも使われる成分です。気をつけて飲みましょう。


 コーヒーだけでなく、煎茶や紅茶にも入っています。最近はノンカフェインのコーヒーや紅茶もあるので、うまく取り入れて下さいね。


 ちなみに、妊婦さんや授乳中のお母さん達がコーヒーや紅茶がダメな理由は、お腹の中の赤ちゃんにはカフェインやアルコールなどを分解する機能、肝臓の機能が十分に育っていないから、なんです。

 分解する能力が十分に育っていない状態でカフェインなどを取り込むとどうなるかというと……。


 大人よりも長時間体の中をカフェインが廻ります。脳の血管にも到達しますし、大人よりも覚醒の効果が強く長く効きます。負担がとんでもなく大きいんです。


 妊婦さんや授乳中のお母さん達はお腹の赤ちゃんを守るために、当たり前にある食べ物、飲み物も注意して生活しなければなりません。頑張ってください!妊婦さん!授乳中のお母さん!



 長くなりましたが、今日はこの辺で終わりにします。カフェインについてはまだまだ付随して書きたいことがありますが、それはまた次の機会に……。

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