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35 鳥に餌なんて一回もあげたこと無いですよ。いっぱいいすぎて餌代がかかりそうですし、キモいし

遅くなりました orz

 三人のご老人には少し待っていもらい、イトさんに頭痛薬を調合してお渡しした。

 シオさんとカイさんにも一応頭痛薬はお渡ししたけれど、根本的な解決には肩こりの解消、運動が一番だという事をしっかりと伝えておいた。

 こうして、三人のご老人は帰っていき、その後は至って平穏に過ぎていった。




 次の日。

 朝日の光が窓から差し込んできて目が覚めた。そういえばまだカーテンを買っていなかった。相も変わらず、窓の外には大量の鳥の魔物。……最近慣れてしまって、もうカーテンいいかな……とも思い始めた。


 今日は魔王様とレイさんと一緒に村の師匠の家に行く予定だ。


 師匠も一緒に行きたいかなと思い、昨日の帰り際に聞いたのだけれど……。


「えー?村の家?んー……僕はいいやー。今はこの家に何を置くかを考えないとだしー!今回だけじゃなくて、またいく予定もあるんでしょー?」

「……まぁ、畑の様子が見たいので、いずれお願いするとは思いますが……。」

「うんうん。僕はその時でいいやー。また予定が決まったら教えてねー!」

「……はぁ。」


 という感じだった。


 新しい家が出来たばかりのタイミングで、前の家に特に用事があるわけでもない状況ならばこうなるか。

 でも、村のみんなに会わなくて良いのだろうか?三年も会っていなかったというのに……。


 決めるのは師匠だし、私があれこれ言うことでもないと思ったから、それ以上は何も言わなかった。

 という事で、今回村に行くのは私とレイさんと魔王様の三人という事になった。

 もしかしたら見張りの人もいるかもしれないが、魔王様とレイさんがいれば必要なさそうな気もする。もちろん、私に逃げる気などないが。



 ベッドから出て、服を着て鏡を見る。きっちりと肌が露出しないように閉じられたボタンたち。手袋も袖の中までしっかり入っているし、タイツもほつれなく肌を外気から遮断している。

 顔を見ると、相変わらず怠そうな目元。口も真横に結ばれていて機嫌が良さそうには見えない。

 ……いつも通りだ。


 頭には真っ白な髪が真っ直ぐ伸びている。結んだりしないのは、首の後ろが見えてしまうのを恐れてだ。襟がある服を着ても、首後ろは見えてしまうかもしれない。引きつり、色の変わった火傷跡の皮膚。誰かの視界に入ったら、気分を害してしまうだろう。


 ふと、鏡の横にある棚を見る。

 真っ白なクモの魔物がくれた、真っ黒なヘアバンド。もらってから、まだ一度も付けていない。


 ……久々に村のみんなに会うのだし、付けてみようか。


 装着してみるが、なんだか不安になる。この付け方で合っているのか?変じゃないか……?

 何度も角度を変えて鏡で確認して……そうして、そろそろ時間だと慌てて木の家を出た。


 ほんの少し外見を変えるのに、これほど勇気がいるとは思わなかった。



 私がバケツなどの荷物を持ってお城に向かうと、お二人は執務室にいると聞いた。きっとギリギリまで仕事をしているのだろう。二人の居場所を教えてくれた兵士さんはニコニコととても笑顔だった。

 ……やっぱり変だったかな、ヘアバンド。


 取ろうかどうしようか悩みながらお城の中を進むと、前から魔王様とレイさんがやってきた。


 廊下で魔王様と向かい合う。

 魔王様は朝から、とてつもなく眩しい笑顔でご挨拶してくださった。


「ヴィリア殿、おはよう。」

「おはようございます、魔王様。」

「この後変身の魔法を使うつもりだ。だから今日はこの前と同じくアーロと呼んでくれ。」

「……はぁ。」

「……その、髪飾りというのか?似合っているな。」

「……ありがとうございます。」


 ……褒められた?ヘアバンド、似合っているのか。なら良かった。

 なんだか、胸がザワザワする。……あれだ、昨日のご老人ズに褒められた時のようなムズムズ感。きっと褒められ慣れていないから、こんなふうに感じるのだろう。


 少し変な感じがするのを、軽く首を振って振り払う。他のことを考えよう、うん。


 今日はアーロ様バージョンなのか。……誰も魔王様の事を知っている人がいない村に行くのに変装する必要はあるのだろうか?……気分かな?気分転換したいと言っていたし。やはり手袋を二組持ってきて正解だったかもしれない。きっと土いじりを楽しみにしておられるのだろう。


「おはようございます、ヴィリアさん。では、転移の間に行きましょうか。」

「おはようございます、レイさん。」


 レイさんもにこやかに挨拶をしてくれて、三人で転移の魔法を使用する専用の部屋に移動する事になった。



 ……すごく、視線が痛い。


 転移用の部屋に移動しているだけなのに、ものすごい視線の攻撃を受けている。

 みんな魔王様を見ているのだろうけれど、その視線が私にもチクチクと、いやグサグサと……いや、ザックザックと刺さってくる。

 兵士の皆さんは驚くような顔で、メイドの皆さんは一瞬目を見開き、そしてこちらを刺すような鋭い視線を向けてくるのだ。そこに侮蔑とかの感情はないように感じる。ただただ射殺さんばかりの鋭い視線が頭から足元までくまなく走ってゆく。


 ……私が何をしたというのか。ただ村の師匠の家に行きたいだけなのに。この視線の鋭さは一体なんなのだろう。


 なんとか刃物のような視線達をやり過ごし、転移用の部屋に到着する。


 「では転移の魔法を発動しますね。私に掴まっていて下さい。」


 言われるままにレイさんの服の袖を掴む。魔王様はレイさんの肩に手を置いていた。


 目を瞑ると、足元から魔力が上に向かって吹き上がる感覚。前と同じで、物凄い魔力量だと感心する。


 前髪が巻き上がる感覚が収まるとともに、懐かしい匂いがしてきた。

 ほんの一ヶ月と少しの間離れただけだったけれど、家の匂いが懐かしいと感じる。不思議だ。


 魔王国に行った時と一緒で、一瞬で帰ってきた。


「着きましたよ。」

「ありがとうございます。」


 着いたのは師匠の家の中。なぜ家の中に着地なのかと聞くと、今回は外よりも家の中の方が転移の着地地点に人がいる確率が低いから、だそうだ。この家は今無人だから、確かにその確率は低いだろう。


「転移の着地地点に人がいると、その人を吹き飛ばしてしまうんですよ。」

「転移の距離が長いほど魔力を使うだろう?その使用魔力量が多いほど、吹き飛ばす力が大きくなるんだ。」


 魔王国とこの村はとても離れているはずだ。転移する時の魔力の量でなんとなくわかる。

 という事は、もし、着地地点に人が立っていたとしたら……。


「消し飛ぶだろうな。」

「そうですねぇ。跡形もなく消し飛ぶかもしれないですね。」


 ……転移魔法、怖……。


 そんな転移魔法の真の恐ろしさに戦慄していると、ドアがノックされた。


「ヴィリアちゃんやーい!」

「……ジルお爺さん?」


 その声は、いつもこの家に生活に必要な物を持ってきてくれるジルお爺さんの声だった。

 声が聞こえた途端、魔王様とレイさんは姿を消す魔法を使った。スッと消えていく二人。無用な混乱は招きたくない、ということだろう。

 私は二人は居ないものとして、玄関ドアに向かった。


「おぉ、やっぱり来ておったか。ヴィリアちゃんが帰ってくる気がするとばーさんが言ってたからな!」

「そうだったんですか。」


 ジルお爺さんの奥さん、イザリアお婆さんはとても感が良い。

 その鋭すぎるくらいの感は師匠よりも上を行くと思う。


 イザお婆さんが言ったのなら、ジルお爺さんが信じて来るのも頷ける。ジルお爺さんはイザお婆さんにゾッコンなのだ。そう村のみんなが言っていた。


「久々に帰って来たんだ、村に顔出していくだろう?」

「……そうですね、畑も見たいので少しだけになるかもですが。」

「ああ、構わん構わん!ばーさんも会えるのを楽しみにして、もうパイを焼いているからな!ちょっとでも顔を見せてやってくれ。」

「はい。じゃぁ少し畑を見たら行きますね。パイ楽しみです。」


 私が村に顔を出すと言うと、とても嬉しそうな顔で頷いてくれるジルお爺さん。心から歓迎してくれているのが伝わってくる。

 ニコニコしていたジルお爺さんは、ふと私の後ろの方を見やって眉を顰めた。

 

「……なんだ、サーテルは来てないのか?」

「師匠は次の機会に来るって言ってました。」

「なんだ、つまらん。フライパンを磨いて待っておったのになー。」

「あはは。残念でしたね。」


 あぁ、師匠が来なかった理由、これかも。師匠もなかなか感が良い人だからな……。

 フライパンを、殴るために磨いていたとは……さすがだ。私も見習わないと。


 ジルお爺さんは去り際に、チラリと家の中を見てニヤリとした。


「ヴィリアちゃんが来る時には、そこの二人も一緒においでな。」

「……ジルお爺さん。」

「わしのこの目は悪いが、もう一つある目はいい方だからな!はっはっは!」


 ジルお爺さんはウインクしながらそう言って、村に戻って行った。

orzってもう死語ですかね?死文字?最近はあまり見ない気がするなって思いました。……もしかして私、古すぎ!?

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