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21 最近街で「〜〜もう遅い!」という作品の本が流行っているそうです。便乗……?いえいえ

 シス君と朝を過ごし、街に人が出はじめるくらいの時間になってドアがノックされた。


「おはようごぜーやすー。看板を依頼されていた大工ですけんどもー。」

「あ、はい。」


 ドア越しに返事をして、ドアを開けに向かう。


「看板?」

「下のお店の看板を頼んでいたんです。昨日。」

「へぇー、昨日の今日で出来上がったんだ!仕事早いんだねー!僕もみたーい!」

「あ……。」


 シス君が躊躇無くドアを開ける。

 声の感じからしてこの前の大工さんだと思われる。

 そんな無警戒に開けると……と思ったがもう遅かった。


 ピカーーーーーーー!!


 くっ!


「うわーー!まぶしーーーーー!?」

「あ!すんません!すんません!さっきまで雲がかかっていたのに、何故か今晴れちまったみたいでビームが……どうかご勘弁をー!」


 頭を両手で隠し、ペコペコ謝る大工さん。もしかしたら、この頭は天気すら操るのかもしれない。


「あははは!君面白いね!仕事も早いんでしょ?うちの国に欲しいなぁ。支店出す気はない?」

「へ?いや、え?いきなり言われましてもですね……いやー。」

「そう言わずにさー!」


 シス君は眩しさもなんのその。すぐに大工さんを勧誘し始めた。もう一つの魔王国に引き抜く気満々だ。


 そういえば、昨日の夜は調べようと思ったけれど、そのままだったもう一つの魔王国。今日こそは調べないと……。


 シス君はもう一つの国のスカウト専門の人なのだろうか?


 大工の責任者さんと一緒に一階のお店前に行き、看板を見せてもらう。


「綺麗だねー!」

「はい。」


 白い看板は、楕円形で柔らかさを伝えてくる。流れるような文字は女性らしさも表しているようだった。さらに、文字の周りにはお店のあちこちにあるものと同じ蔦の模様が入っていて統一感もある。

 ちなみに、私は看板に入れる文字とどこに置くかを伝えただけだ。デザインは全て大工さん。この大工さんのお店は本当にいい仕事をしてくれるようだ。これからも贔屓にさせてもらおう。


「これで大丈夫ですんかね?」

「はい。」

「よかったぁー!あんまり注文が少ないもんで、なかなか悩んで作ったんですよー!んだらば設置させてもらいますー!」


 こうして、私のお店は見た目は完璧になった。後は集客だけだ。それが一番問題なのだけれど。



 設置作業を眺めていると、シス君が急にバタバタと動き出した。辺りを見回して、何かを気にしているようだ。


「どうしたんですか?シス君。」

「うんとねー!今日はそろそろ帰るよー!」

「そうですか。」

「またそのうち来るね!今度会う時には僕の国に来る話、いい返事が聞けると良いなー!」

「それについてですが……。」

「……まて。オカシス。」


 借金の事があるから移ることは出来ないのだと言おうと思ったところで、とてつもなく低い声が聞こえてきた。


「ぴっ!」


 何か聞き覚えのある声。その声にシス君は直立不動になった。

 声のした方を見ると……魔王様が腕を組んで立っていらっしゃる。今日もキラキラしているので、きっと魔法で変装しているのだろう。


 ……シス君と知り合いなのだろうか?


「オカシス!お前、負けたのに引き抜きしようとは……約束も守れんのか。」

「違うよー!ヴィリアとは友達なんだもん!友達として、僕の国に来てくれないかなーって思っただけだよー!」

「呼び捨て……だと。」

「ふふーん!良いでしょーー!」

「ぐぬぬ……。」


 魔王様とシス君は、私の呼び方という心底どうでも良い事で楽しそうに話をしている。


 ……そういえば、シス君はアズ君のところに行くと言っていたな……アズ君……アズロ様……あぁ、なるほど。シス君は最初からアズロ魔王様に会いにきていたのか。頭の中で魔王様としか呼んでいなかったから、気付かなかった。


 という事は、勝負に負けたと言っていたところから、シス君は魔王様と勝負をしたのか。……負けたのにさっき大工さんを勧誘していた事は言わない方が良いのかな?あ、シス君がすごく視線を送ってきている。言って欲しいのかな?え?違う?


「しかもさっき、傷の手当てまでしてくれたんだよー!僕たち仲良いんだー!」

「なん……だと……。」

「処置代は請求しました。適正価格で。」

「そこは言っちゃダメーーー!」

「友達なのに適正価格か!ははは!」

「ぐぬー!」


 今度は逆にシス君が悔しがっている。


 二人の掛け合いが落ち着いたところで、魔王様がこちらを向いた。


「それで、ヴィリア殿。このオカシスとは仲が良いのか?」

「……昨日少し会話をして、今日朝から家に押し掛けられた程度の仲です。」

「押し掛け……オカシス。わかっているな……。」

「ひぃ!」

「ヴィリア殿。普通、ちょっと会っただけで朝から人の家に押し掛けてくる魔族はそういない。基本は家に入れなくて良いからな?」

「そうなのですね、わかりました。」


 シス君は普通じゃなかったのか。


「それから、看板。良い仕上がりだな。」

「……ありがとうございます。」


 いきなり看板の話になって、少し反応が遅れてしまった。


「看板代も私の方で出しておこう。お店、上手く行くように祈っている。では、私はこいつを国外に出してくる。またな。」

「え、あ、はい。」

「えー!僕もう少しこっちで遊びた……うわーーーーーーーーー!」


 魔王様は、ごねるシス君の首根っこを掴むとグルグルと回して放り投げてしまった。その様子は、古代人の本で読んだジャイアントスイングを彷彿とさせた。

 その後、魔王様は背中から羽を生やして追いかけるように飛んでいった。


 朝から騒がしかった。そして去り際は慌ただしかった。

 今度魔王様に会ったら、看板代のお礼を言わないと……。


 私と大工の責任者さんは、二人が小さな粒になって見えなくなるまで空を見ていた。



 さて、朝から少し疲れたけれど今日もお店を開店させなければ。

 人が来る来ないに関わらず、お店はちゃんと開けなければならない。お店は信用が大事だと本に書いてあった。いつ開いているかわからないお店に、人は来ようと思わないらしい。行って閉まっていたら、その時間が無駄になるし、悲しいからだ。


 看板の設置が終わって、大工さんたちが帰っていく。


 そのうちの一人が何か思い出したのか、急に引き返してきた。


「あのぉ……。」

「はい?」

「筋肉痛に効く薬ってありますかねぇ?」

「貼り薬で良いですか?」

「ええ!」


 思わぬところで商品が売れた。お店を出してから、初めてのお客様だ。シス君は処置だったし、ケーキ屋さんのウェイトレスをしているヘレナさんは開店前のお客様だったから……。お店が開店してからのちゃんとしたお客様は初めてだ。


 貼り薬だけじゃなくて、お風呂の浴槽に入れるタイプの疲労回復剤も売れるかもしれない……。


 売れそうなもので作れるものはどんどん作っていこう。



 お店を閉めてから商店街近くにある図書館へ行った。


 世界の地図や情勢が書いてある本を借りて寝る前に軽く読んでみた。

 ここ、アズロ魔王国が原初の魔力落下地点の南にあって、もう一つの魔王国は落下地点を挟んで北にあるらしい。

 魔王国の名前は……。


「オカシス魔王国……。」


 シス君はスカウトマンじゃなかった。魔王様だった。

 アズロ魔王様と仲良しなのも頷けるお人だった。私魔王様を君呼びしているんだけれど……良いのかな。


「考えても意味はないか……。向こうがそう呼べって言ったんだし。」


 次に会う時にはちゃんと借金があるから行けませんってお断りしないとなぁ……。


 あ。


 借金で思い出した。思い出してしまった……。

 明日師匠が家にくる日だ……。うわぁ……めんどくさい事思い出しちゃった。


 忘れてたって事で無視しちゃダメかな……いや。

 むしろ迎えに行かないとまた面倒ごとに巻き込まれて借金が増えそう……。


 あと、泣き叫ぶ師匠が頭に浮かんだ。……仕方ない、明日は迎えに行ってあげるか……。

サブタイトルは出落ちですね。

会話が多くてなかなか進まないー。ただ、二人の魔王様はそこまで仲が悪いわけではないという事が伝わればいいなと思います。



今日のどうでもいい薬の話は 薬の用法、容量の話です。


薬には何錠(または何包)を何時に飲んでください。というものがありますよね。


当たり前な話ですが、あれは、効果が出る最適な量に設定されています。

薬が効果を発揮している時、というのは、消化された薬の成分が全身の血液中を回っている時です。

代謝されて体から排出されると効果が切れます。


薬の成分はグラフにすると山を描くように血液中で濃度を濃くして、やがて降りていき効果が出なくなります。薬の血液中の濃度の事を血中濃度と言います。

効果が出過ぎる(副作用が出やすい)オーバーラインと、効果が出ないアンダーラインが設定されていて、その間(適正な効果が出る範囲)を上手いこと長時間いてくれるように、とても計算されて作られています。


なので、血中濃度をしっかり考えて作られている薬を自己解釈で飲みすぎたり、半分にしたりすると効果が出過ぎて副作用が出たり、逆に効果が出なかったりしてしまいます。


用法というのはそういう意図で決められているんですね。


お医者様が出す薬は、物によっては自分で調整するように言われる薬もありますから、一概には言えませんが、市販薬は決まっています。


薬には年齢制限が設けられているものがあります。

例えば、イブプロフェンという痛み止めに使われる成分は、十五歳以上からしか飲めません。

重篤な副作用の危険があったりすると設定されていたりします。


時折、お客様で自分の子供は十三歳だけれども、体は大人と変わらないくらい大きいから……という方がいます。

体が大きければ大丈夫なのか?というと……実はダメなんです。


大事なのは見た目の大きさではなく、内臓の成長度合いです。

体は成長しきっていても、内臓の処理能力が備わっていなければ薬の副作用が強く出る可能性があります。


年齢制限は、内臓の成長も見越して設定されているので、見た目で判断はしないでください。用法容量はきちんと守りましょう。


薬ではないので、余談ですが……アルコールも同じような事ですね。二十歳まではアルコールの処理に負担がかかり、依存性になったり急性アルコール中毒になる恐れがあるので制限されています。もちろん二十歳を過ぎても飲みすぎは気を付けてくださいね。


特に妊婦さんや授乳期のお母さんがアルコールやカフェインがダメな理由は赤ちゃんの処理能力なんです。

妊婦さんとお腹の赤ちゃんは繋がっていて、アルコールなども赤ちゃんまで渡ってしまいます。


でも赤ちゃんにはアルコールを分解する能力がまだ出来上がっていません。

するとどうなるか……。


本来大人なら数時間で分解できるアルコールが、赤ちゃんの場合、十何時間も体を回り続けます。体への負担は計りしれません。特に脳への負担も恐ろしい物になります。カフェインも同じように分解出来ないので、大人の倍以上の時間回り続けます。その間、目が覚めっぱなし……とはいかないので、脳の興奮状態が続くような感じです。


とても恐ろしいものですよね。だから妊婦さんや授乳期のお母さんたちは気を付けています。

妊婦さんにプレゼントなど考えている時はその辺も考慮してあげてくださいね。


今日は以上です。

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