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13 結局……棚にどんな順番で薬を並べるか考えてしまいなかなか寝つけませんでした


「ここが……君の住んでいる家なのか……。」

「はい。」

「……話には聞いていたが、ここまでとは……。」


 魔王様は何やら驚いているようだった。

 木の家があまりにも『木』で驚いているのだろうか?



 一階部分では、レイさんに派遣されたのだろう大工さんたちが仕事をしていた。……というか、すでに完成しそうな勢いだった。今日の朝から来たとして……お昼までに終わっちゃうって凄いな……。

 大工さん達は魔力を使って木材を持ち上げたり、完成した棚を設置場所まで運んだりしている。

 ……人族の国の大工さんとは全く違う。魔力があっても、ここまで器用に使うことができる人族は貴族くらいのもの。人族の国で働く大工さんは、古代人の本に書いてあるのとあまり変わらない。


 私は魔王様をあまり待たせないように、少しだけ完成しつつあるお店部分を見た。


 入り口にガラスをはめ込んだ両開きの扉が設置されている。お店の中は、奥にカウンター、入り口から向かって左にテーブルとイスが用意してあり、右には棚が天井近くまで設置されている。

 全体的に白で統一されていて、アクセントに緑色の草模様が所々に入っている。


 半日も経たずにここまで出来ている事にもだけれど、その清潔感のある内装に驚いた。


「綺麗……。」

「おぅ!ありがとうよー!嬢ちゃんのお店楽しみにしてるぜー!」


 私の呟きを拾った大工さんはそう言って歯を見せて笑うと、店の奥へと向かって行った。


「なかなか良い内装じゃないか?」

「はい。本当に……。」


 大工さんが去ってもまだ綺麗な内装に見惚れていた私に、魔王様も感想を言ってくれる。


 こんな綺麗なお店を……私が使っていいの?

 借金を返すまでほとんど一生を、このお店で暮らすのか……。なんでだろう。借金という形で縛られているはずなのに、恵まれていると思ってしまっている自分がいた。


 なんとか意識をお店から外して、二階の住居部分へと向かう。

 すでに階段は完成していた。色は木の家の幹よりも少し白っぽくしてあって、違和感がない。段は、幹に沿うように緩やかな螺旋になっている。


「中の作りは普通の家だな。」

「ヘンテコな家の中を想像していましたか?」

「まぁ、外見がインパクトあったからな。」


 二階に上がると、魔王様は荷物を下ろして家の中を見回していた。

 私はケーキを真っ先に受け取って、冷蔵魔庫へとしまう。今日の荷物で一番大事な物だ。


「……昨日からですのでまだ全てをわかっているわけではないと思いますが、とても良い家だと思いますよ。」

「そうか。なら良かった。」


 魔王様はキラキラとした微笑を浮かべて満足げに頷いた。その微笑みは絵になるな、と思った。



 魔王様は一通り二階部分の内部見学を済ませると、イスに座った。まだ気になるものでもあるのだろうか。……三階は寝室なので見せませんよ。


 師匠の家から持ってきていた香草でお茶を入れて出すと、魔王様はお礼を言って受け取った。毒味しなくて良いか聞こうとしたが、魔王様はさっさと飲んでしまった。

 ちなみに、この香草茶には眠気を取る成分は入っていない。


「見たところ、暮らす上で不自由は無さそうだな。」

「はい。」

「何か気になる事や、必要なものがあったら遠慮無く言ってくれ。」


 そんな好待遇で良いのだろうか?私は借金を返す側なんだけれど……。そう思っていると、魔王様は言葉を続けた。


「君や君の師匠をこの地に留めてしまう事になったからね。せっかく他所の地から来たんだ、どうせなら満足の行く暮らしを送って欲しいんだ。これは私の自己満足だから、君は気にしなくて良い。」

「……はぁ。」

「この国を治めるものとして、この国を好きになってもらえたら嬉しいんだよ。」


 そう言ってもう一度微笑む魔王様。さっきの微笑みよりもなんだか……凄み?があるような気がした。

 ……魔王様はきっと、この国を治めることに誇りを持っているのだろう。


 そんな顔で言われてしまうと、好待遇を受け取るしか出来ない。


「……ありがとうございます。」

「ああ。」



 そんな会話をしていたところに、魔法による連絡が来た。


 ポンッという音とともに魔王様の頭上に小さな魔石が突然浮かんだと思ったら、スススと目線の位置まで降りてきてレイさんの姿を形取った。


 そして、レイさんの姿になった魔石は宙に浮いたまま話始めた。


「魔王様、そろそろ戻っていただきませんと書類が片付きません。更に、先程オカシス様より手紙が届きました。こちらも早く中を検めていただきとうございます。」

「わかった。すぐに戻る。」

「お待ちしております。」


 会話を済ませると魔石は色をなくし、重力に負けるように落下していった。


 落下途中の魔石を、魔王様が慣れた様子で掴む。と、何かを思いついたようにこちらを向いた。


「……中身のない魔石は薬師に必要か?」

「……いただけるならば。」


 薬師に、という事は私個人に聞いたのではない……と思う。それでも、一瞬体が強張ってしまった。

 ……私の魔力の事がバレているのかと思った。


 努めて平静に、私は貰えるならばと答える。そこに薬師に必要かどうかの答えはあえて入れなかった。

 すると魔王様はコクンと頷き、私の手を取って先程色を失ったばかりの魔石を乗せてくれた。


 その手はすぐに離れると思ったのに、魔王様はそのまま両手で包むように握ってしまった。


 な、なんだ?何が起こっている?なんで手を包まれているの?


「……何か困ったことがあったらすぐに言ってくれ。」

「えっと……。」

「必ず言うんだ。いいね?」

「……はい。」


 何がどうして、こんな保護者のような顔をされているのかよくわからない。よくわからないけれど、断れない雰囲気なので頷いておいた。


 その後、連絡する手段を準備しておく、と言って魔王様は帰っていった。



 なんだか魔王様と長い時間過ごしすぎて頭がクラクラする。

 

 私は頭を軽く振って、この後の予定を思い出す。


 まずは湿布作りだ。そのあとは買ってきたものを配置して、暮らしやすさを向上させなければ……。


 まだ下の階は完成していないので、私は二階で湿布作りを開始した。


 腰の痛み用の湿布は、温感タイプが良く選ばれる。体の中心部なのであまり冷やすのが良くないためなのと、慢性的な痛みの人が多いからだ。

 温かい湿布を貼ると痛みが増す人には、どちらでもないものを調合する。


 今回は普通に温めるものを作ろう。


 私はこの国に来た時に持ってきたカバンを開けて、薬草をいくつか取り出す。湿布くらいならここにある物で作れる。

 ただ、数はそんなに用意できないから、足りなくなってきたら街で調達しなければ……。師匠が薬草を作るにしても時間がかかるだろうし。


 今回の調合は魔力を使うこともなく、乳鉢で薬草をすりつぶし、混ぜて完成だ。完成したものを茶色い色のついた小さな瓶に詰めて、蓋をする。あとはガーゼを数枚と固定する用の包帯を用意すれば完成だ。


 すりつぶすのに少し時間がかかったが、日が落ちる前にヘレナさんに届けることができた。


「では、一日二回、出来ればお風呂上がりと朝に貼ってください。お風呂に入る三十分前には剥がしてくださいね。ピリピリしますから。」

「はいぃ!ありがとうございます!」


 こうしてヘレナさんへの対処が終わり、私は木の家に帰った。


 ……なんだか疲れた気がする。今日は早く寝よう。

魔王様絡みが思いの外長くなってしまって、湿布の話がほんの少しになってしまいました……。

と、言うわけで……。


どうでもいいお薬の話 3


今回は湿布のお話。


湿布は直接患部に貼ることで、痛みを止める成分や血流を良くする成分などを浸透させて効かせる物です。飲み薬は一度消化されて血液に乗って全身に回っていくので、ピンポイントで効かせるならば湿布はとても有効です。

湿布には種類があります。冷感タイプと温感タイプ、そして微冷感、何もないものなど。


どんな場合にどのタイプがいいのかを説明します。


まず冷感タイプ。これは患部が熱をもっている時に使います。

例えば、足を捻ってしまった!とか、突き指をした!とか……。炎症が起こっている時は冷やすために冷感タイプを使います。

次に温感タイプ。これは慢性的な痛みや、冷えで膝が痛いなどと言った場合に使います。

私が接客する中で良く聞いていたのは、お風呂に入った時に気持ち良いかどうか、です。

気持ち良いなら温めた方がいい、痛みが増すなら冷やした方がいい、と言う具合です。


わからない時はどちらでもない何もないタイプを選ぶのもいいと思います。また、体の中心部が患部の場合はあまり冷やすのが良くないので何もないタイプか温感タイプをオススメしていました。


湿布は直接患部に貼れるので、とてもよく効くのですが、長時間貼り付けるのでかぶれてしまう人もいます。

そんな人のためにあるのがクリームタイプや軟膏タイプ、液体タイプの塗り薬です。


密封されないのでかぶれにくく、痛みを止める成分などもしっかり入っている物も多いので最近はそちらの方がよく売れたりします。


塗り薬はタイプごとの塗り方があります。患部の場所によってタイプを選ぶといいと思います。


クリームタイプはしっかりと塗り込んでいきます。マッサージなどもしたい場所に向いています。逆に塗りづらい場所などには向いていません。


軟膏タイプはスッスと塗り広げたらあとは乾くまで待つタイプです。少しベタつきますが塗るのが簡単です。


最後に液体タイプ。液体タイプは二度塗りします。軟膏よりもサラッとしているので、揮発しやすいです。薬効成分が揮発し切る前にもう一度塗る事で上から蓋をするようなイメージですね。塗りにくい背中や腰などに向いています。また軟膏よりも乾くのが早く、サラッとしているので、朝など急ぐ時にも塗りやすいです。


こんな感じで色々と場所や状態で選ぶのが変わってくるのが湿布薬です。


最近は病院でしか出せなかった痛みを止める成分が、一般のドラッグストアに置けるようになったりして、色々と種類があります。

一番最初にそうなったのがインドメタシンなんだそうな……。(もしかしたら間違っているかもしれないですが……)最近はロキソニンが有名ですかね。成分によっては合う合わないもありますので、最初は枚数の少ない物で試す事をオススメします。また、薬効成分は日光に当たるとかぶれたりするものがありますので、貼ったり塗ったりした場所は、出来るだけ日光に当てないようにして下さいね。


ちょっと長くなりましたが、今回は以上です。皆さんも色々と使い分けしてみてください。




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