聖なる努力のリワード・タイム
結果からいうとガンギマリアは三十四位だった。
聖女の母数からみると、可もなく不可もなく。報酬は参加賞程度。当然、表彰式のステージに登壇することもない。
それでも以前の最下位付近という惨状と比較すればよっぽどマシで、ノーマンは歓喜にむせび泣いた。丸いおなかがタッポンタッポン揺れるのに合わせてミケ太郎も踊った。ガンギマリアはエイミーの手をとり感謝を述べ最高級の聖水ティーをご馳走しようとしたがそれはノーマンが全力で阻止した。「エイミー殿を堕とすくらいなら、わしの涙を聖水に変えてくだされ!」――ノーマンは激情に任せて言ってしまった。真面目に受け取ったガンギマリアは曇りなき善意でお望み通りにしてあげた。ノーマンは堕ちた。死因:粘膜吸収(※死んでない)。
記念以上の意味はないが、ガンギマリア陣営は表彰式を見に行くことにした。表彰式は王都中心部の野外劇場で行われ、大勢の観衆が詰めかけるなか、上位七人が登壇し、終身名誉プロデューサーから豪華な報酬を手渡される。栄冠に輝いた聖女たち、通称『ルナティア・セブン』の中には、五年連続一位を達成した聖女クリスターヤも含まれており、聖女ファンだけでなく勇者ファンにとっても注目の一大イベントだ!
「ミケ太郎、ゴキゲンだね」
このところ非戦闘時は接続を切るようにしているけれど、魔力糸なんてなくても、エイミーにはミケ太郎の気持ちがわかった。すごくワクワクして、ものすごくドキドキしている。今朝から【幻影魔法】の制御が乱れっぱなしで、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と色彩の変化が目まぐるしい。
「今年もすごい人混みですねー」
ガンギマリアはまるで聖女のような笑顔で景色を眺めている。観衆が多すぎて、劇場に続く大通りや民家の屋根の上にまで人が行列を作っている。エイミーたちの位置からは、つま先立ちでもステージがよく見えない。
ミケ太郎はエイミーの腕から抜け出て、みんなの頭より少し高く浮かんだ。人の頭の海のむこうに、立派な石造りの舞台が覗く。
「あっ、始まりましたぞ!」
表彰式が始まる。司会が何か叫んでいるが、拡声魔法込みでもここまでは届いてこない。着飾ったルナティア・セブンたちが舞台に上がり、綺麗に整列。司会が各聖女の紹介やら、各方面からの祝いのメッセージとおぼしきものを一通り読みおえたのち、いよいよメインイベント。ある意味聖女たちより人気のある終身名誉プロデューサーが、賞品を抱えて舞台裏から歩み出る。
ミケ太郎のまんまるな目に、終身名誉プロデューサーの姿が映ったとき、
――今朝から反応しっぱなしだった【美咲感知】が唸りを上げた。
(みさきちゃん!!!!!!!!!!!!!!!)
ミケ太郎は飛んだ。エイミーの制止なんて聞こえなかった。幻影を解いて、ありのままの姿になった。観衆が振り上げた手を避けながら、飛んで、飛んで、飛んでいく。十五年の旅の終わりが、もうすぐそこに見えている。
実時間にすれば、一分にも満たない飛行だっただろう。もどかしい空の旅を終えて、ミケ太郎はついに檀上へ辿り着いた。人が手を伸ばせば届く位置に、煌びやかなトロフィーを抱えた終身名誉プロデューサー、勇者ミサキ・ホーリーがいた。身長が伸びていたって、着ている服が違っていたって、ミケ太郎には関係ない。
(みさきちゃん!! みさきちゃん!! みさきちゃん!! みさきちゃん!!)
ミケ太郎はありったけの思念を飛ばした。沢山言いたいことがあったけど、今はそれしか言えなかった。
勇者ミサキは突然脳内に響いた音声に思わず片目を閉じ、不思議そうな顔でこちらを振り向いた。
彼女は言った。
「何? この汚い人形」
警備につまみ出されながら何を考えていたか、ミケ太郎は覚えていない。
でも、結論として、人間の言葉でいうと。
ミケ太郎は鬱になった。
【第4章 それイけぶっトべ!聖女様総選挙!!】
完
(最終回じゃ)ないです




