①
例の如く何も考えていません……
既になんでこうなったかよくわからないという。
流れにまかせて書く予定。
主人公より作者が流されている。
12/04
菁 犬兎様から頂いた絵がとてもイメージぴったりなので、扉絵に使わせて頂きました。
菁 犬兎様、ありがとうございました!!
──マイペースだ、と人は言う。私のことを。
『マイペース』……全く意味のわからない言葉だ。
他人に合わせてみたところで所詮は他人だろう。
自分を動かしているのは自分だけだ。
もっとも実際使用されるこの言葉に含まれるものはペースなんぞではない。
大概の場合、揶揄。
だから私はこの言葉が嫌いだ。
──ガタン、ゴトン
線路の通る高架下……そこに私の職場はある。
日本の電車は世界一優れているという。
ストで停止したりしないし、安全で、なにもなければほぼダイヤを守った時刻に発着する。
この音を煩わしく思う人もいるけれど、私は好きだ。
私の日々のルーティーンなんかよりも、しっかりしているモノを守っている誰かの勤勉さを思うと……なんだか頑張れる気がして。
「……まだ残ってたの?」
「課長……」
終わらない書類整理。
こういった地味で面倒な仕事を片付けるのは、いつの間にか私の役回りになっていた。
グループに属そうとしない私への軽い嫌がらせのつもりなのだろうが、何故ああも余裕でいれるのだろうか不思議だ。
──こういうことは想定しないのだろうか、と。
そんな金曜日の夜。
時刻は19時を少し回っている。
「これ、君の担当じゃないよね?」
「ええ……まぁ……」
最近業績悪化及び、コンプライアンスにより残業とサービス残業に厳しくなった。同時に職場の人間の馴れ合い的な癒着にも。
想定するのが当然だろうに、残業をしないからわからないのだろうか。
頭が悪すぎる。勤務態度も悪いが。
私は人畜無害そうな、地味で大人しそうな顔をしている。
こういう場合それは有利に働くのだ。
「……申し訳ありません。 なかなか断るのが難しくて……」
「いや、君は良くやってくれている……付けてないんだろ? 残業。 もうそれは放っておきなさい。 月曜中にやらせればいい」
そう言うと課長は私を優しく諭し、今後このようなことがないようにすると約束してくれた。
ただし、実のところは全て想定通りに事が運ばれたに過ぎない。
だって彼女らと違い、私は想定済みだったのだから。
「断るのが難しい」と課長には言ったが、実は今まで上手いこと理由をつけては断っていた。
その一方で『金曜日なら空いている』ことを匂わせておいたら、アッサリ引っ掛かった。ちょろい。
よもや私が課長の予定と行動をチェックし、こうなることを予測していたなんて露程も思わず、仕事を溜め込んで渡してくるという阿呆共。
私にこんな風に見られていることも、まるでわかっちゃいないのだろう。
(ああ、馬鹿馬鹿しい)
──ガタン、ゴトン
替わりのきく、私の仕事。
馬鹿馬鹿しいのは私も同じだ。
こんな馬鹿げたことに労力を割いている。
「よう」
着替えて入口に行くと、何故か課長が待っていた。
「お疲れ」
「お疲れ様です……」
どうでもイイ人達の中で、彼だけは違う匂いがしている。
……なんというか、怖い。
課長は本社から派遣されてきた人間だ。業務の見直しがメインの仕事で、同時に監査と立て直しも行っているという。
……下っぱOLの私はよく知らないが、給湯室でくちさがない子等が話していたのを耳にしたことがある。
だからこそうってつけの人間だった訳だが、積極的に関わりたいとは思っていない。
「食事、まだだろ?」
「……ええ、まぁ」
課長に食事に誘われた。
断りたかったが、上手い理由が思い付かず、流される形で食事を共にすることになった。
そして流れ流され、気が付くと同じベッドで朝を迎えていた。
なんでこうなったのか、よくわからない。
──ガタン、ゴトン
「…………」
遠くに電車の音が聞こえる。
「ああ、ここ防音しっかりしてるんだけどさ……やっぱり煩い?」
大きなマンション。5階角部屋。
「いえ……素敵なお部屋ですね」
「いい場所だがね、この部屋だけは線路が近いから安かったんだ」
「……そうですか」
「まだ早いよ? ゆっくりしよう」
そう言って、課長は私を抱きしめる。
やがてその腕の重みが増し、頭頂部あたりにかかる柔らかな寝息を確認すると、ゆっくり腕をほどいてその場から逃げだした。
駅のホームは人で溢れていた。
人身事故があったらしい。
ダイヤが乱れている。
「なんつータイミングだよ……」と後ろでごちる、誰かの声。
……全くだ。
閲覧ありがとうございます。
キャラ名出てない(つけてない)事に今気付いた……