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束縛


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お、落ち着いて!落ち着いて!ね?


元カノさんは、肩に力が入り過ぎて、ボールがとことんポケットに嫌われた。


「だから、肩に力入りすぎだって。」

「だったら、私に譲ってください。」

「だから、譲るも何も私のじゃない。」


ダメだ全然話が通じない。


それでも、前半は集中力もあって、ゲームの流れ読みあって、なかなかの勝負をしていた。つもり。


女同士の読み合いというのは久しぶりだった。私的には、結構楽しかった。でも、時間が進むにつれて、元カノさんがイライラし始めた。


ふと、時計をみると、診察時間ギリギリの時間だった。


「あ、私そろそろ行かないと……」

「待ってください!」


元カノに袖を掴まれて、離してもらえない。えぇええええ!!嘘でしょ?


「私、こんな気持ちになったの初めてなんです。」


そう言って、元カノは泣き出した。


「うん、うん、だから、私、行くね。」

「だから、隆人を失いたくないんです。」

「うん、うん、そっか。じゃ、私行くね。」


どうしよう……今から急いでも、完全に予約時間過ぎる。でも、せめて午前中の診察に間に合えば……


そこに隆人がやってきた。


「隆人!」

「由奈、やっぱりここにいた……。」


なんだ。二人は待ち合わせしてたんだ。良かった。ちょうどいい。ここは、隆人に任せて私はここを出よう!


「あの、私、お邪魔みたいだから、帰るね。二人でごゆっくり~。」

「待ってよ。」


今度は隆人に引き止められた。


「だから、何なの!?私は関係ないってさっきから言ってるのに!」

「関係無くないよ。あのさ、俺、前から瑠璃の事が好きだって言ってるよね?」


はぁあああ?正気なの!?今この状況で言う!?元カノの前で言う!?何だかムカついた。


「あ~!はいはい、そう!いいよ!だったら付き合うよ!隆人と付き合えば、梨理は喜ぶかもしれないよね。」

「それって……俺が隼人の弟だから?」


こう言えば、隆人は離れてくれるはず。


「そりゃそうでしょ。だってさ、梨理が隼人と結婚できなかったし。梨理の無念を私が晴らす?みたいな?」


隆人には酷だけど、今の私にはこんな言葉しか出てこなかった。


私は酷い人間だ。


ごめん…………隆人。


すると、そこへ電話がかかってきた。画面をみると、吉高さんからだった。


「あ、ちょっと私、電話して来る。」

「待てよ!!」


外に出ようとすると、隆人に腕を掴まれて、その場から動けずにいた。その間、電話は鳴り続けた。


「え?でも、電話……」

「それでもいい。それでもいいから付き合ってよ。」

「はぁ?」


とうとう吉高さんの電話は切れてしまった。


「元々年が離れてるし、最初からOKしてもらえるとも思って無い。だけど……吉高の代わりでいい。それでもいい。」


それは………………意外だった。意外過ぎる言葉だった。


隆人がそこまで本気だったなんて……。


え?本気?嘘でしょ?


「隆人、ひどいよ……。私の目の前で……私がどれだけ隆人の事……最低!!」


そりゃ最低だわ。ある意味ギャグ?一周回ってギャグですか?


元カノは泣きながらビリヤード場を出て行った。


「瑠璃、巻き込んでごめん。」


隆人の反応に、何となく察した。隆人の告白は多分、元カノを諦めさせるためのパフォーマンスだったんじゃないかと思った。そんな風に感じた。


だからって、ここまでする事はないのに……。彼女が少し可哀想になった。


「彼女、可愛いのに……。本当にいいの?あんな風に振っちゃって……。」


その言葉に、何故か隆人がカチンときていた。


「いいって言ったからね?瑠璃は付き合うって言ったからね?誰が何と言おうと、俺達、付き合ってるんだからね?」

「え?」


何?何怒ってるの?


「だから、もう、吉高と会わないでよ?」


えぇ!?何子供みたいな事言ってるの?


「そんなの無理だよ。吉高さんとは同じ会社だし……」

「じゃあ、会社以外では会わないでよ。絶対だよ?わかった?」


何だか、隆人の顔が………………少し怖かった。


「でも電話…………」

「ダメ!!」

「はぁ?!」


隆人、そんなに束縛するタイプだったの!?そりゃ彼女も嫌になるよ……。いや、嫌になったのは隆人の方か……。


え!?一体どうゆう事!?


それからとうもの………………隆人の監視は続いて……


一緒にいる時は携帯まで取り上げられた。


正直、ここまでされるとストレスが溜まった。


「ねぇ、もういい加減にしてよ!!」

「瑠璃がいけないんだよ!!こそこそ吉高と連絡取ろうとするから!!」

「こそこそなんてしてないって!携帯返して!!明日仕事!!さっさと帰って!!」


そう言って、隆人を家から追い出した。


イライラする……。


隆人のせいで、休みに全然休めなかった……。


次の日、吉高さんに事の経緯を話して、電話に出られなかった事をお詫びした。


「そうか……。そうだったのか。いや、別に大した事じゃない。」


その、吉高さんの大した事じゃない事って何?逆に気になるんですけど……。


「瑠璃~!」

その高いテンションは……


私が吉高さんの所から戻ると、早坂さんがやってきた。

「瑠璃、合コンしよう!!」

「あの……いや……」

「え!?何!?やっぱり吉高さんと付き合ってるの!?」


いや、まぁ、そうなるよね。


「違うんですよ……。」


私は早坂さんとお昼にランチに出た。この前吉高さんと入った洋食屋さんに二人で入った。


それぞれ注文を済ませると、2歳年下の早坂さんに、まさかの恋の話を聞いてもらった。


早坂さんはオムライスのケチャップを口につけながら言った。


「なるほど~!彼氏の束縛が強くて合コン行けないのね~!」

「いや、彼氏というか、勢いと言うか、流れでそうなっただけで……。」

「そっかぁ~てっきり吉高とって思ってたのに」


正直、私もその可能性の方が高いと思ってました。


「彼氏、若いの?」


早坂さんが口を拭くのを見ながら、何故そう訊かれるのか不思議に思った。けど、冷静に考えると、7歳年下ってそこそこ年下。


現に7歳年下だと言うと、早坂さんは普通に驚いていた。


「7歳下と知り合える事ある?それって珍しいよね?何?ナンパ?」

「いえ、幼なじみです。弟みたいな人です。」

「弟~?そりゃ弟だね~!私の弟より下だもん。」


犯罪レベルで年下だとは一応自覚してます。私はサラダのクルトンをつつきながら早坂さんの話を聞いた。


「自分の5下って言うとさ、ちょうど就活とかで大変な時期じゃない?」


思わず、フォークを持つ手が止まった。


「そうなんですか?私、大学出てないのでそこらへんよくわからなくて……。」

「うちの弟が今年新社会人なんだけど、去年一昨年就活で大変そうだったよ~?」


私はまだ知らなかった。


隆人がこの7歳という年の差を、どれ程の苦労で埋めようと、苦しみもがいていたのか。


「でも、行き過ぎだと思ったらキッパリと別れた方がいいよ?」

「キッパリ…………。」


携帯取あげは実際やりすぎかなぁ……。


「そのうちDVとかになったりもするから」


隆人が暴力……?


「なんかあったら、すぐ!すぐ言って!」


早坂さん……。


全然、知ろうともしなかった。


隆人がどれ程の時間、私を想い悩み考えていたのか。


その時の私には、ただ子供みたいに、付き合ってるんだからね?彼女なんだからね?そう言っているだけにしか思えなかった。


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