それぞれの休日 1
「·········嘘だろ?」
目が覚めて、いつものようになんとなく窓の外を見る。俺の目に入ってきたのは、まばゆい光を放つ、もう半分ほど昇ってしまった太陽だった。
「···くそ、せっかくの休日が···。そりゃ休みだと思ってノーライフ・ノーゲーム一気見したけどさぁ…。面白いからやめられなかったけど···!いくらなんでも寝すぎだろ俺···」
「まぁいいか、飯食ったら次ははたらかない魔王様!でも見よう···」
ーーーーーー3時間後···
「さて、なぜかカツドゥーンが食べたくなってしまったし、材料買いに行くかぁ」
お金を持って外に出た俺は、近くにある
ユージュアルストリートに向かう。
いつも通りに賑わっている通りに、なぜか安心してしまった。
「おや、ヴァンじゃないか」
そう声をかけてきたのは、肉屋のおばちゃんだった。
「こんちは、相変わらず元気そう」
「そりゃそうさ!まだまだ若いよあたしゃ!」
「と、それよりあんたまたウチで働かないかい?旦那より働き者だしさぁ」
「あはは、手伝いたいですけど、ナビゲーターの仕事も楽じゃないんで···。最近は能力が何も無くても、1つの分野でとんでもなく強い、なんてやつも出てきましたし」
「そうかい…あんたも大変だねぇ。まぁ、死なないように頑張りなよ!」
「はい、ありがとうございます。おばさんも元気で!」
「······じゃなくて、トンカツ用の肉、貰えますか?」
「ああ、はいはい、ちょっと待ちなね·········。ほら、代金は500リンだよ」
「ありがとう!それじゃあ、今度こそ元気で」
愛想よく手を振るおばちゃんに軽く一礼する。
「さて、油と粉、卵はまだあるし、あれ?玉ねぎもあったな…。てぇことは、もう材料揃ってるじゃん。かーえろ」
家に帰ってすぐカツ丼を作ったが、
「あれ、こんなに黒かったっけな………ま、まぁ、食えるだろ」
まずかった。
この後は特にやることのなかった俺は、
はたらかない魔王さま!の続きを見て、風呂はいって武器の手入れして寝るだけだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時間、朝に戻りましてぇ、クリスの一日を見てみよう
「お嬢様、朝ですよ、起きて下さい」
「うーん、あと5分……Zzz…」
「もう、昨日も遅くまでアニメ見てたんですね···」
と、フォラン家のメイド、ハイナ・ルーチスは呆れてため息をつく。
お嬢様にふさわしい広さの部屋の一面に貼られたアニメポスターや、綺麗に並べられたアニメグッズの数々
(それはいいんだけど、生活習慣が崩れるのはよくないなぁ···)
と思うハイナだが、この状態のクリスはなかなか起きないので、先に部屋の掃除をすることにした。
「んん……ふあぁ…あ、おはよう、ハイナ···」
「おはようございます。いつも通り先に部屋をお掃除させていただきました。」
「そう、ありがとう。今日は特に何も予定ないわよね?」
「はい、何もありませんが、何かやりたいことでもおありですか?」
「そうね···お昼から子供たちの所にいくわ」
「そうですか、わかりました。フフッ、お嬢様は本当に子供が大好きですね。園にはこちらから連絡しておきますね」
「ええ、お願いね。さて、それまではぁ!昨日のアニメの続きよ!」
「······ついでにアニメも好きですね···」微笑みが苦笑いに変わった瞬間だった。
ーーーー4時間後···
「ふぅ、アニメ見るのも楽じゃないわね。脳死になっていっちゃうし。ま、午後は子供たちとの時間だし、準備しよっと♪」
フォラン邸を出て10分も歩けばフォラン家が創立した、この街唯一の保育園、ナァールチャル保育園がある。
やはりこの世界にも種族差別はあったようで、昔の転生者が
「子供達を幼少期から一緒に学ばせ、差別意識を少なくすることが必要だ!」
と訴え、それをフォラン家が拾うことにしたらしい。
反対の声もあったようだが、今ではここのおかげか、差別はどんどん見なくなっていった。
クリスが園に足を踏み入れると、
「あ!クリス姉ちゃんだ!」
と、わらわらと様々な種族の子供が寄ってきた。
エルフや犬、鳥、猫などの獣人、ドワーフ、龍族、魚人族など、色々だ。
「こんにちは。みんな、元気にしてた?」
「うん!きょうもいっぱいたたかいごっこしたりしてあそんだ!」
「よしよし、いい子ね!子供は元気がいちばん!」
目の前にいた猫の獣人の男の子の頭をなでるクリス。と、その子は気持ちよさそうに手に頭を擦り寄せてきた。
「はぁ………!天使……」
顔が自然とにやけてしまうクリス。
「て、もうそんなに時間ないし、みんな、お姉ちゃんと遊ぼう」
とクリスが発言すると、子供たちの目は輝き、クリスの長い耳には様々な遊びの名が飛び込んできた。さすがに全部やる時間はないので、
「よーし!じゃあおにごっこ!お姉ちゃんが鬼になるから、みんな逃げてね!」
様々な声をあげて散っていく子供たち
それからも様々な遊びをしていたが、やがて親が迎えに来る時間となった。
「クリス姉ちゃん!またね!」と元気に手を振る子に、
「うん!また遊びに来るからねぇ!」と伝えるクリス。
家に帰り、ソファーに倒れ込むクリス。
「疲れたけど、楽しかったなぁ!やっぱり子供たちは私の癒しだ!これでまた、、明日も頑張れる………Zzz」
「······あ、お嬢様こんな所で寝て、おつかれだったんですね」
毛布を持ってきてクリスにそっと掛けるハイナ
「夕飯までですからね、お嬢様?」
クリスの幸せそうな寝顔を見て、思わず笑みがこぼれてしまうハイナだった。