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転生者ナビゲーター  作者: 岩木 久四郎
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1人目の転生者

真っ白な空間ーーー···その床の中心には、円状の模様が1つ。

そこから4つの線のような模様があり、部屋の隅にまた1つずつ、計5つの円状の模様が描かれている。


その円の中心に、一人…。


「いた···?」と俺の影から頭をのぞかせるクリス。

「ああ···」とだけ答える俺。


中肉中背で、目元まである長さの黒髪の男に近づき、俺はこう問いかけた。

「ようこそ、この世界へ。あなたはどこから来られましたか?」

男はクリスやルカを見て、少しの間驚いている様子を見せた。よくある反応だ。

しばらくして口を開いた男は、

「えっと…、ここは一体…?」と答えた。


「ここはいくつかあるとされている世界の1つです。あなたの元いた世界と、この世界の他に、まだいくつか世界があるとされています。あなたは前の世界で死んでしまい、この世界に転生した···という訳です」

というヴァンの話を聞き、いまいち納得しきれていない男に、ヴァンは、


「我々はナビゲーターです。あなたが良い人であれば、この世界の基本的なことを案内します。もし悪人ならば、お帰りいただき、元の世界で1からやり直して貰うことになっています。記憶がある限りでいいので、質問にお答えください」

と言った。


これを聞いた男は、少し緊張した様子だが

「はい」と答えた。


「まず、あなたの名前と、元の世界で何をしていたのか、お聞かせください」


「名は清水孝太郎。日本という場所で会社員として働いていました」


「日本…ですか。なるほど、趣味などは何かありましたか?」


「アニメやゲームが大好きでした!まさか異世界転生できるなんて…!!」


感激して涙している孝太郎を見て、ルカやクリスが少し引いたような気がするが、まぁ続けていこう。


「身体に何か変わったことはありませんか?」


「いえ、特には…。少し若返ったような気がしますが」

(ふむ···)

クリスに目をやり、首を横に振ったのを確認する。

会話の間に、この男の魔法適性がどの程度なのか調べてもらっていた。この男の魔法適性は0、つまりチート能力を持つ可能性は低くなった。

魔法適性、魔法が使えるかどうかというものだが、

これはほぼ運で決まると言える。

親からの遺伝という訳ではない

その人の才能があるかどうか、だ。

ある程度魔法が使える人ならば、相手に自分の魔力を被せるだけでわかるという。


「では次に、あなたの恋人と母親が溺れています。助けられるのはどちらか一人、どちらを助けますか?1分以内に答えてください」


「ええ!そんなの選べるわけ…」

男はしばらく必死に思考を巡らせて正解を探していたが、

ついには1分以内に答えを出すことはできなかった…。


あるアニメに影響されて、答えは沈黙だと言いたくて作った問いだった

でも知らない奴には効果的な質問なのであえて問わせてもらった


「選べない、のは人として当然ですね。どうやらあなたは悪い人ではなさそうですね」


俺たちはあくまでざっくりと善し悪しを判断するだけなので、この程度でいいんだ。


「どうやらあなたは危険ではなさそうですし、案内させていただきます」


「ありがとうございます!···とその前に、、、」

つかつかと男はルカの前に歩いていくと

「モフモフさせて下さい!ケモ耳をモフるの、夢だったんです!」

と頭を下げていた…。


犬の獣人のためか、初対面の相手には警戒心が強いルカは、

「嫌です!!」と声を荒らげながら、思いっきり引いていた。


そこからは、「そこを何とか!」「嫌!」

の繰り返しだった。

しばらくして、このままじゃ日が暮れると思ったのか、アイルがルカのもとへ行き、


「まぁ少しくらいいいじゃないか」と言うと、ルカは少し迷ったように、

「でも···!」と言う。そこでアイルが、

「後で唐揚げ作ってやるから···」と言った。

それを聞いたルカは「うぅ···」と言いながら

頭だけならという条件で、30秒ほど触らせてあげていた。


ぶっちゃけ俺でもアイルの唐揚げが食えるんならやってしまうだろう。だって美味しいんだもん!


、、、しばらくして「案内します」という俺を先頭に歩いていたが、


「ここならケモ耳ロリっ子たちとキャッキャウフフできるんだぁ〜♪」

という男の浮かれた声が皆の耳にとまった。


立ち止まり、黙っている俺たちを見て、男は

「あれ?どうしたんですか?」と聞く。


俺たち4人はゆっくりと振り向き、満面の笑みで


「悪い転生者は、お帰りください」

と声を揃えて言ってやった。

「えぇぇーーー!!」


近ごろ転生者による犯罪も増えてきたので、こういう芽も摘まなければならないんだ。何より心の底から気持ち悪いという目をうちの女性2人が男に向けていた…。


男を拘束し、中心の円模様の上に寝かせ、俺たち4人は部屋の隅の円模様にそれぞれ立った。


魔法力を高め、中心の円に送られると、なぜか元の世界に戻るらしい···。

詳しいことはよく知らない。先輩が言ってただけだしね。


ーォオオオオオオオオォォォーー······


男を送り終え、これで俺たちの今日の仕事は終わりだ。


「チート能力こそなかったものの、危険思想を持ってたね…」

というクリスの発言に、3人は無意識に頷いていた…。


「唐揚げ食って忘れよう···」とアイル。

「今日はしょうゆ味ね!」と注文をつけるルカ

「もも肉で、お肉は大きめに切ってね」と更に注文をつけるクリス。


もしあいつがチート能力を持っていて、大人しく帰らなかったら、

俺たちは戦わないといけない。

そう考えると、

(こんな日があってもいいか···)

と思うしかない仕事内容だった。

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