プロローグ:死刑宣告から始まる非英雄譚
初めまして。日野下蝙蝠【ひのしたこうもり】と言います。
文章書くなんて小学校の作文以来です。書いてみると凄く難しいですね。
自分はゲームが好きで、RPGのウジウジ悩む主人公が少し苦手だったりします。行儀も良すぎですよね。もっとガンガンいけー!って思う時がしばしばあります。
そんな願望をこの作品で発散出来たらなって思いながら書いていくのでお付き合い宜しくお願い致します。
「被告人、風間来栖を死刑に処す。」
死刑判決を受けてから数日が立ち、死刑囚こと俺、風間来栖は護送車で別の刑務所に移送されている最中であった。
罪状は殺人と強姦。7人もの前途ある学生の命を奪った罪はでかいんだとよ。その7人が1人の女によってたかって乱暴してたんだから笑える。助けてやった女も何も証言しないもんだから俺が強姦した事になってしまった。
「どうせなら本当にやっちまえば良かったか?」
一緒に乗り込んでいる監視役の警察官が睨み付けて無言の圧力をかけてくる。他の護送されている囚人からも余計な騒ぎを起こすなよという視線が突き刺さる。
後悔が思わず口に出てしまった。まぁ、合意じゃないと楽しくないから却下だな。それにしても死刑か………納得いかん!
1人の女を7人で襲う様なクズは殺されて当然だろ!?むしろ称賛されて然るべきだろ!?くそっ!どいつもこいつも俺の事を信じない………まぁ、俺があいつらだったら信じないな。うん。日頃の行いが悪すぎた。来世があるなら反省して生きよう。
そういえば毎回キャンキャン吠えてきたあの女警察官だけは信じてくれたな。名前はなんて言ったけ?確か今流行りのDQNネーム改めキラキラネームっぽい感じだった様な………と特徴的なあいつの名前を思い出そうとしていると突然大きな衝撃ともに上下左右が揺さぶられ、自分の体も車内でボールのように床や天井、壁に打ち付けられた。
「くそっ!何がどうなってんだ。」
車内でバウンドして体中が痛い。顔を起こすと世界が逆さまになっている。いや、車がひっくりかえってるのか。何が起きたのか確認する為に外に出なければならない。這いずって外に出ようとすると、一緒に乗り込んでいた警察官に足を捕まれた。
「待て………逃がさんぞ。」
「うるさい!黙ってろ!」
警官の手を蹴り払い、顔を思い切り蹴とばすと警官の意識は無くなったのか静かになった。気を取り直して外に出てみるとそこには信じられない光景が広がっていた………
「なんだこれは!?」
警察と何者かが銃撃戦を繰り広げているではないか。周囲に目を向けると俺が乗っていた護送車と大きなトラックが火を挙げながら横転していた。
「トラックが護送車に突っ込んだのか!?だが何故銃の撃ち合い!?」
目の前に繰り広げられる非日常に混乱しつつも俺は神に感謝した。
「死を待つだけの状況から考えればこんな状況でも天国だな。」
そう独りごちながら護送車の影に身を隠し周囲を伺っていると囚人服をきた男が護送車から這い出てきた。
「よう!兄ちゃん、俺のおかげ助かったな。感謝してくれよ?」
「は?何言ってんだよ?」
「あいつら俺の組の奴らでな。俺を助ける為に来てくれたのよ!」
どうも護送中の同乗者に裏の世界の偉い方がいらっしゃったようだ。
「さぁ、兄ちゃん!あっちのトラックの影まで走るぞ!」
偉い人に言われるがまま横転したトラックの影まで走る。
「兄ちゃん!好きな武器とってあいつらにぶち込んでやりな!」
偉い人は俺にそう言うと横転したトラックのリアドアを開け、中から銃を何丁か取り出し銃撃戦を繰り広げている仲間の元へ駆けて行った。
「おいおい、マジかよ。積み荷全部重火器の類じゃねぇか……」
普通の拳銃からマシンガン、アサルトライフル果てはロケットランチャーらしき物までトラックの中は重火器の見本市だった。平和な日本でもあるとこにはあるもんだなと場違いにも感心し、比較的扱いやすそうな拳銃を2丁取り、1丁をポケットに、もう1丁を手に取ると聞きなれた声が耳に入ってきた。
「風間さん!どこですか!?風間さん!」
「お前!?なんで此処にいるんだ!?」
「私はまだあなたの死刑を認めたわけじゃありません!最後まであなたを信じて見届ける義務があります!」
「答えになってないわ!」
護送中思い浮かべていた例のキラキラネームの警察官がそこにはいた。まさか護送中もついてきてたとは……
「とりあえず、こちらに来て下さい!」
「嫌だ!どうせこのまま死刑になるなら俺はこのチャンスに逃げる!」
「馬鹿な事言ってないで早く!危ないです!」
「大人しく死を待つほど人間できてないわ!阿呆が!」
「私が何とかしますから!ちゃんと事件の内容を世間に知って貰って再度公正な裁判を受けましょう!
「公正な裁判を受けて判決が死刑だったら!?」
「……………」
「おぃぃぃっ!?何とかするんじゃないんかい!?」
「犯した罪を償わずに胸を張って生きれますか!?」
「死んだら張る胸もないわ!?」
場違いなやりとりをしていると、今が危険な状況という事を忘れてしまいそうになる。
「そっちこそ危ないからさっさと向こうへ行け!」
「行きません!風間さんを連れて帰るまでは動きません!」
「阿呆が!俺みたいな悪人放っておけ!あの事件も全部警察の公表した通りだ!」
「嘘つき!女の子を助ける為にやった事でしょ!信じてくれって言ってたじゃないですか!」
「くそ!あれは同情を引くために言っただけだ!お前はまんまと騙されたんだよ!」
「信じません!風間さんは悪い人ですが、クズですが、最低ですが、デリカシーもないですが!」
「ねぇ、俺の事嫌い!?」
「でも、女の子に乱暴なんてする人じゃないって知ってますから!」
目頭が熱くなる。こいつは俺の事を信じてくれているんだ。
「だから、きちんと誤解は解いて、解いた上で死刑なら受け入れましょう!」
こいつ俺に死んでほしいの?
「分かったから、とりあえずこっちに来て身を隠せ!」
「絶体逃げたら駄目ですよ!」
「分かったから!」
ようやく問答を終え。キラキラネームの女警官がこちらに向かってくる。とんでもない女だ。俺みたいなクズの事を信じたり、銃弾行き交う中まで俺の事を追ってきたり_
乾いた銃声が響いた
こっちに向かって走ってきていた女の体が傾き、次の瞬間その場に倒れこんだ。
撃たれた?撃たれた?誰が?なんで?いや?待て?待て?待て!!!
落ち着け!まずはしなければならない事はなんだ!
トラックの影から飛び出て女の元へ走る。警察か襲撃者か知らないが、銃口をこちらに向けてきた者には容赦なく手に持った拳銃で応戦する。女の元にたどり着くと、すぐに女を抱えトラックの影まで走り戻る。抱えている手が女の血で真っ赤に染まり、女の命が危険であると容易に見て取れる。
「おい!大丈夫か!しっかりしろ!おいお前!」
呼びかけて返事はない。顔からどんどん血の気が引いているのが分かる。
「おい!キラキラネームまた馬鹿にしてやるから言い返してこいよ!」
軽口を叩いて女の頬を叩くと弱々しい声で女が返事をする。
「ぎりぎりキラキラネームじゃないです……」
そうだ。思い出した。女の名前は___
「秋津、秋津、恋!死ぬなぁぁぁぁ!」
風間来栖の叫び声と共に、複雑な紋様が地面に浮かび上がり、光と共に2人を包み込む。光がより一層輝き、世界が白に染まり静寂を取り戻すと、トラックごと二人の姿は消え去っていた___