第9話 街だからこそできること
街に来てお金が豊富にある。
これは楽しくなるのが普通だろう。
まずは泊まるところを確保しないと。
寝るところがないと街では困るから。
誰もいないとこから、土魔法でちょちょいと寝るところくらい作れる。
だけど、街でそんなことしたら、怒られそう。
だから、ちゃんと泊まる所を確保しないと。
冒険者ギルドの人に教わった初心者冒険者が泊まる宿に行ってみた。
「うーん、ちょっとクオリティが・・・」
個室だというけど、3帖くらい。
ベッドしかない部屋。
正直、日本でのホテルのイメージがある転生者にはちょっときつい。
お金もあることだから、もう少し良い宿を探そう。
「ここはどうかな」
料金が銀貨1枚。さきほどの宿の3倍だ。
部屋も広いし、何よりも清潔感がうれしい。
受付の女性も感じがいい。
この宿は上級市民が泊まる所らしい。
もっと高級な宿になると貴族向けになってしまうので、爵位がない人は泊まれない。
ここはお金さえあればだれでも泊まれる一番いい宿だ。
「それでは、1週間分で銀貨6枚になります」
1週間だと銀貨1枚お得ということで、1週間分お金を入れた。
これで寝るところは確保した。
次は食事だな。
宿探しをしているとき、上手そうな匂いがする居酒屋を見つけておいた。
そこに行こう。
『白猫亭』と看板があるその店は、宿から歩いてすぐの所にある。
看板の猫のイラストがかわいい。
「いらっしゃい、にゃあ~」
店員さんは猫耳をつけている、じゃないか。
猫人族の店員さんがいる。
もちろん、普通の人の店員もいるけどね。
「何飲むのかにゃあ~」
別に猫人族だからといっても、語尾に「にゃあ」をつける必要はないと思うが。
どうも、お客さんウケがいいみたいでわざと「にゃあ」しているみたいだ。
「ビールを」
「はいっ」
ささっと動いてビールを注いで持ってくる。
素早いなぁ。さすが猫人族。
「どうぞっ」
「ありがとう、これチップね」
「わぁ、ありがと、にゃあ~」
店員さんの衣装には、おへそと胸の中間くらいのところにポケットがついている。
そこには、銅貨が沢山入っている。
私も真似して、大銅貨を入れてみた。
さすがに銀貨は入れないけど、普通の銅貨より猫店員さんの喜び方が大きい。
「あと、キジ肉のローストと、温野菜サラダね」
壁のメニューからつまみを頼む。
ふう。
オーダー終わってひと段落。
ビールをぐいっと飲んで周りを見てみる。
まだ日は沈んでいないけど、みんなビール片手に楽しそうにしている。
この街の普通の人のための居酒屋らしい。
料理の値段は定食で大銅貨1枚くらい。
お酒を別にすれば、そのくらいでお腹一杯になるのだろう。
もっとも調子にのって飲んでいたら、どうなるか分からないが。
ビールを2杯飲んで、ほろ酔い気分。
お腹も一杯になった。
日も沈んで暗くなった。
さてさて。そろそろいい時間か。
街に来たら、行きたいと思っていたところに出陣だっ。




