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第75話 街長さんの依頼はでかかった

「あなたが今、人気急上昇中の土魔法使いですか」

「はい」


うーん、いつのまに人気急上昇なんてしていたんだろう。

だけど、街長さんが噂に聞いた土魔法使いは私以外いないだろう。


「土魔法には詳しくないんだが。すごいことができるとか」

「すごいことってほどじゃないですけど。家は良く作っています」

「1時間か2時間で作るんですよね。そういうのをすごいと言うんです」


確かに。

最近は家づくりが当たり前になってしまったから、鈍感になっていたな。

知らない人からしたら、すごいことだよな。


「もしかして。街長さんも家の新築を考えているんですか?」

「家は作る気はないんですが」

「家じゃないんですか?」

「はい。街です」

「街?」


街長さんの悩みは、街がもう満杯だということ。

24街区ができたから、ちょっと余裕ができたけど、たぶんすぐに埋まってしまう。


そうなると、もう新しい土地は街の中にはない。


この世界の街というのは、壁で囲われた範囲のことを言う。

壁で野獣や魔獣、野盗などから、住人を守る。


壁で守られた範囲が街と呼ばれる。



壁で囲われている以上、勝手に広げることなどできない。

もっと土地が欲しいとなったら、新たに別の街を造るしかない。


「すぐ近くに新しい街を造ろうと考えていまして」

「へぇ。それは大きな話ですね」

「外壁って、土魔法で作れますよね」


壁作りは土魔法が使えると分かった頃、1回経験している。

北方の軍団が作っていた防御壁。


土からレンガを作って積み上げた。

あの時、たぶん、100人の隊員さんの1日分作業がすぐできたから、作業員1000人分くらいだったはず。


今は、あの頃より土魔法になれたから何倍もできる自信ある。


「はい。壁で使うレンガ造りは土魔法の基本ですから」

「やっぱり、そうなんですね。街づくり手伝ってくれませんか?」

「えっと、どんな計画なんですか?」


それから街長さんの夢の話を一杯きいた。


「こんな街にしたいんですよ」


キラキラした目で語られると弱いな。

ついつい、協力したくなる。


「だけど、国が用意してくれる人員や予算に限りがあって・・・」


現実の話になると、急に声が小さくなる。


「そんなときに、偉大な土魔法使いがこの街にいるって話ですよ」

「はい」

「神様が私に遣わしてくれたんだ、と信じてもおかしくないですよね」


おかしいでしょう。

それ、自分勝手っていうんじゃないですか?


「でも、すごく作業が多いんですよね」

「そうです。普通の作業員だとそうなります。だけど、偉大な土魔法使いさんなら、ちょちょいと」

「できません」

「えっ?」

「街を造るのは、ちょちょいと、は無理です」


結局、押し切られてしまった。

1回テストでどのくらいできるのかを一緒に試してみようという話になった。


うーん、この人の夢に乗ってしまうと、ブラック企業に就職するようなものだと思うんだけど。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか主人公女難ってか色々考え方変えないと人生自体めんどくさくなりそう かわいそうに
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