第70話 ドラゴ大神、もしかして復活?
青石で創った青龍像。
不思議にリアルな動きで、ふわふわ浮いている。
見上げる観衆を注目を浴びて、舞台に向かってのんびりと飛んで行く。
「むむむ。あまりリアルに作ると魂が宿ってしまう、っていうあれか?」
「どうしたの?あんたが動かしているんでしょ、あれ」
「そうでもなくて・・・創ったのは私ですが」
私も、女剣士もびっくりしている。
舞台の中心まで来た青龍像は、ゆっくり着地した。
「ド、ドラゴ大神様ですか?」
「・・・」
何も答えない。
大神官さん、もうひれ伏してしまっている。
「力添えしてくれて、ありがとうこざいます。私に力がないばかりに」
青龍像が青い光に包まれていく。
その光が青龍像から離れて、青龍像の少し上に収斂していく。
光が小さく、強く変わっていく。
その光が急に動きだし、大神官にぶつかる。
「あっ」
対応するには、あまりに速い動きだった。
何もできないまま、大神官は倒れてしまった。
「やばい。何が起きているんだ」
舞台に上がって、大神官を助け起こす。
よかった・・・息はあるようだ。
「ん?・・・なんだ・・・」
「あ、気が付かれましたか?」
「あ、はい。だ、大丈夫です」
バリンと言う音と共に、青龍像は崩れ落ちて青石の山になる。
不思議な力は去ってしまった様だ。
「どこか、違和感あるところはありませんか?」
「違和感・・・えっ、なに。なんだ!」
大神官は身体の中を駆け巡っている魔力に戸惑いを感じていた。
大神官と言っても、魔法を使える訳ではない。
大神官職は、代々血族で引き継がれていくため、魔力の有無に関わらずなれる。
時には魔力が強い大神官も生まれるが、大抵は全く魔法が使えないレベルが多い。
今の大神官も魔法は全く使えない人だった。
「魔力を感じます。自分の身体の中に」
「なら、あの青石に魔力を注いでください」
言われた通り、魔力を青石に注ぎこむイメージをする。
青石が動き出し、青龍の形になっていく。
「ああー。ドラゴ大神様っ」
またひれ伏してしまった。
同時に青龍の形が崩れて青石の山に戻ってしまう。
「大神官様にドラゴ大神様の力が宿ったみたいですね」
「ありがとうこざいます。ありがとうございます」
よっぽどうれしかったんだろう。
青石の山に何度も頭を下げる大神官。
「これでドラゴ大神様の偉大さを私でも伝えることができます」
確かに。魔法も使えない大神官だと、あまりに弱い感じがする。
でも、なんでまた、この瞬間にドラゴ大神の力が復活したのだろうか。
「もしかして。青石の力か」
青龍の鱗からできたという伝説がある青石。
舞台の分と、私が持ち込んだ分。
両方合わせるとなかなかの量だ。
そのうえ、ここはドラゴ大神さんの神殿。
神様の力を召喚されてもおかしくない。
そう、ひとり納得した土魔法使いだった。
ひとつだけ、気が付いていないこと。
それは、もうひとつ神様が復活するのに必要な鍵。
神様との間を取り持つ存在だった。




