第7話 冒険者ギルドのライセンス
「やっと入れた」
転生して初めての街。
壁で囲われているから、簡単に入れないと思っていたが本当に大変だった。
「ちょっと、こちらへ」
何しに街へ来たのか。
身分証明書はあるのか。
何をしてきた人か。
困ったことに、答えられないことが多すぎる。
転生してまだ1か月というのは、言えやしないしな。
「クリスタルを売りに来た魔法使いです」
「ほう。なら、何か魔法を使ってみせろ」
「なにをしましょう」
「火を出してみろ」
あー、そうだよなぁ。
魔法使いと言うと火、だよな。
冒険者になって火の魔法で魔物を退治する。
そんなお話、この世界でもあるんだろう。
「ごめんなさい。火は無理です」
「そうか。なら水を出してみろ」
「水も無理です」
「じゃあ、何ができるんだ?」
「クリスタルの操作なら得意です」
バックからクリスタルを取り出すふりをして、アイテムボックスから出す。
大小さまざま、色もさまざまなクリスタルの山。
「ほう、一杯持っているんだな」
「それでは、行きますよ」
何を造ろうか。
そうだタワーを造ろう。
クリスタルを置いた机をぽんと叩くと、クリスタルが動き出す。
巨大遺跡と呼ばれているスカイタワーを造る。
白い素材で造られたすらっとした姿のタワーだ。
にょきっと、タワーが伸びていくのは見ていて楽しい。
桃色と紫のクリスタルがあるから、ライトアップしたバージョンにしよう。
「すこいな、おまえ」
「まぁ、土魔法は得意なので」
「そのクリスタルを売りに来たということだな」
「そうです」
「それでは、一緒に冒険者ギルドに行くぞ」
「えっ、そんなことしてくれるんですか」
とっても親切な衛兵さんだと思っていたら、ちょっと偉い人だったらしい。
別に門にいなくても部下がちゃんとやっているから、だって。
「よぉ、面白い奴を連れてきたぞ」
「おお、ガンちゃん、お久しぶり」
冒険者ギルドのギルド長の部屋というとこに連れ込まれた。
冒険者としてのライセンスを発行させようというのらしい。
「とにかくライセンスがないと、街では不便だからな」
「そうなんですね。でも、冒険者はするつもりないんですが」
「魔法使いなんだから、冒険者ってことにするのが一番簡単だからさ」
魔法使いのギルドはあるけど、ライセンスを取るのが時間がかかるらしい。
その点冒険者ギルドなら、一番下のG級ライセンスならすぐ発行してくれるみたい。
「ガンちゃんが連れてくるというと、そこそこできる奴なんだろう」
「それはもう。面白い魔法を使う奴でして」
「ほう。何かやってみてくれないか?」
この街の人は好奇心旺盛みたいだな。
またクリスタルを取り出して、ギルド長の机の上に置く。
今度は何を作ろうかな。
そうだ、ドラゴンにしよう。
と言っても、この時代のドラゴンは見たことないから、150年前の怪獣映画に出てきたドラゴンにしよう。
黄色のクリスタルが足りないから、白をベースにしてアクセントに黄色のクリスタルを。
怪獣フィギュア造形師になったつもりで、活き活きとしたドラゴンの姿を作る。
「おおーっ。すごい。首が3つあるドラゴンとは」
「ちなみにしっぽも3本です」
しっぽが3本だったか、1本だったか。
うろ覚えだったけど、3本を採用していた。
ヤマタノオロチはしっぽが8本なのは確実なんだけど。
「俺も冒険者をしていたけど、こんなドラゴンは聞いたこともないぞ」
「えっと、前に聞いた伝承に出てきたドラゴンなんです」
「そうなのか」
ひとしきりドラゴン談義をギルド長として、ライセンスを発行してもらった。
G級ライセンス。
魔法使いギルドでしっかりと試験を受ければ、最低A級認定はもらえるはず。
本当はSSS級なんだけどね。
とにかく、これで身分証明が手に入った。
どうなることか、びくびくだったけど、なんとかなってよかったな。