第51話 スラム街はもうありません
「やっと完成しました」
依頼主がひょっこりと現れた。
スラム街の地主さんが見学にやってきた。
再開発を土魔法使いに頼んだのはいいけど、どのくらい進んでいるのか心配になったんだろう。
ほぼ完成したから、地主さんに見てもらいたいなと思っていたら、ちょうどいいタイミングで来てくれた。
「どうでしょう。綺麗に造成できているでしょう」
「すごい」
もっと褒めてほしいんだけど、言葉がそれしかでないのはちょっと不満。
湿地がちで板を渡して歩いていたスラム街は、今や全く違う景色となっていた。
湿地対策は地下の排水管で対応した。排水管で余計な水を回収して川に流す仕組みだ。
元スラム街の再開発地区の約1万㎡のほとんどに巡らした地下排水システム。
なかなか、うまく動作した。
たまっていた水が排水され、土壌に水が含まれなくなる。
ただ、問題も起きてしまって、地盤が30センチくらい下がってしまった。
低い土地は雨が降ると浸水となりやすいので、土を持ってきて地面をあげておいた。
その土は、川沿いにある私の邸宅の下を空洞にして対応した。
邸宅の下には、10mもの高さがある大きな地下室がある。
再開発地区は、大きな横道を2本通した。
あと、川沿いと壁沿いにも、小さな横道を用意した。
大きな横道2本で川通り地区、中通り地区、壁通り地区の3つの地区に分けられる。
それぞれの地区は3000㎡程度で、50㎡の敷地が60区画に分けておいた。
区画整理は完了しているけど、まだ誰も家を建ててはいない。
あるのは、私の屋敷と元スラム住人の団地だけ。
「どうです、地主さん。なかなか良い感じに仕上がっていると思いますが」
「すごいとしか言いようがない。お世話になりました」
「それでは、約束どおり壁通り地区の40区画は私の土地ですね」
区画整理が完成したので、その報酬を土地でもらった。
壁通り地区の60区画のうち、団地の3区画と37区画の計40区画。
壁通り地区には、元スラム住民のための団地がひとつ建っている。
川通り地区には、私の邸宅が建っている。
中通り地区には、建物はない。
再開発地区全体でみると、私の土地は1/3だ。
いつの間にか、私も大地主になったようだ。
「どうやってこの土地売り出すつもりですか?私の土地も売り出すつもりなので相談させてください」
「もちろん。一緒にいい地区になるように協力していきましょう」
固く地主さんと握手して、さらなる開発を約束した。
今日投稿の4話目です。がんがん行きます。
ついでに、止まっていた他の連載も更新はじまりました。
まずは、錬金畑です。この話、もう少しでこっちの主人公の噂が出てくる予定です。
舞台が一緒なんです。スピンアウトならぬ、スピンインですね。
楽しく書いているので、楽しく読んでもらえると嬉しいです。
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