第37話 狼娘
あいつも、私も地上に降りてしまった。
うわ、こっちに向かってくる。
一目散に逃げ出す。
もちろん、あいつの方が全然速い。
追いつかれるっ。
「なんてね」
塔のあった場所は、落とし穴にしておいた。
そこに乗って飛び上がったあいつは踏みしめる大地がないことに驚く。
下に落ちていく。
巨大で深い落とし穴。
周りはセラミックとシリコーンで上張りした。
柔らかいシリコーンと堅いセラミック。
どっちも土を素材にして作れる物質だ。
落とし穴は同じシリコーンとセラミックで作った檻の蓋をつけておいた。
実はこの落とし穴を完成させるのに時間がかかるから、時間稼ぎに石で作った物で対策していたのだ。
あのランクの魔物では石では力負けすると分かってはいたけど、創成に時間がかからないのが石だからだ。
「ふう。おーい。狼さんよぉ」
落とし穴を上からのぞく。
100mも下に掘っておいたから、何も見えないが。
がっがっがっ。
壁をよじ登ってくる音がする。
メゲナイな、あいつ。
がーんと檻の蓋にぶつかる。
しなって、押し戻す。
また落ちていった。
でもまた、がっがっが。
すごいパワーだな、あいつ。
リーダー達も集まってくる。
「どうなった?」
「落とし穴にいれたんだけど、まだあきらめないのよ」
「がおーーーん」
衝撃波だ。
予想していたから、みんな後ろに下がっている。
ばっちん。
また、檻の蓋にぶつかった音。
もちろん、衝撃波でも壊れない素材だから、大丈夫。
「あれ?あいつ光っているぞ」
檻の蓋にぶつかったあいつの身体が真っ白な光が包んでいく。
光が弱まってくると、巨大魔狼の姿に見えない。
「どこいった?」
さらに光が収まると、人型になっていく。
5歳児くらいの女の子?
「えっ、誰?」
「おまえ、強いな」
しゃべった。
もしかして、あの巨大魔狼?
「我は森の主だ。なぜ我を捕らえるのだ?」
よく見ると、狼の毛皮のビキニを着ている。
しっぽとケモミミがついている。
「もしかして、狼男、おっと違うか。狼娘?」
「我は森の主だ。人の姿にもなれるだけだ」
話が通じるみたいだ。
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