第32話 新居にミモザを連れていく
「さぁ、いくよ」
「はい」
今まで一緒にいた宿屋を出て、新居に向かって歩く。
何も説明していないから、ぴっくりするだろう。
喜んでくれるかな。
「あの橋を渡れば、着くよ」
「えっ、スラム街?」
ミモザは、あそこがスラム街だと知っているらしい。
だけど、これからは変わっていくんだ。
「あそこに行くの?」
「ああ。僕らの新居があるからね」
「いかないと駄目?」
「えっ、嫌なの?」
スラムだから・・・だよね。
もう今は、スラムじゃなくなってきているんだけど。
湿地帯は排水管を張り巡らしたから、水はけの良い土地になったし。
スラムの人たちは、まだ住居が完成していないから、仮の体育館みたいのを作ったから、そこに移動してもらったし。
ごちゃごちゃしてとこじゃ、もうない。
「スラムだって変な人達がいる所じゃないよ」
「そうじゃなくて・・・」
「嫌なの?」
「大丈夫。あなたと一緒なら」
ミモザがうれしくなることを言ってくれる。
「なら、行こう」
二人で橋を渡った。
僕らの家に行くために。
「ここが僕らの家さ」
「本当?すごい」
まだ、完成ではないけど、形だけ作ってある。
庭を含めた土地は300坪、敷地の周りは花壇で囲ってある。
まだ、草花は植えていないけど、レンガ製で50センチくらい上がった花壇になっている。
屋敷は敷地面積70坪。平均的な市民の家が20坪程度だから3倍以上だ。
洋館づくりになっていて、総3階建てだ。
建物面積は210坪。
正直言って、ふたりで住むようなところじゃない。
まだ、スケルトン状態と言って、内装がされていないし、外壁も横や後ろは粗削りの石材のまま。
これから、時間をかけて作って行く予定。
1階の玄関に近いところに、ショールームを入れてあるから、そこで生活はもうできる。
ベッド等の家具も運びこんであるから、すぐに住めるはずだ。
「まだ、これだけしか完成していないんだ」
「ふたりなら、これでも十分じゃないかしら」
「そうなんだけどね。せっかくだから、理想のお家、一緒に作っていこうよ」
「うれしい」
ラブラブ状態で、ベッドに倒れ込む。
その後、何したかって。
ご想像に任せます。




