第312話 貴族さんはカジノがお気に入り
「このルーレットというのは面白いな」
「はいっ。気に入ってもらえて嬉しいです」
カジノで一番人気のバニーちゃん。
違うか。狐獣人だからフォックスちゃん。
ナイスバディでしっぽがふわふわで。
薄茶色の髪の毛が長くてサラサラな21歳の娘。
お酒やちょっとした小料理をトレイに載せて、カジノに興じているお客さんにサーブしている。
普段はね。
今は隣町領主の男爵さんの専属にさせられている。
「困ります」
と言っても、「問題ない」で押し通されてしまった。
おかげでバニーちゃんとキャットちゃんが残りのお客さんのサーブで大忙し。
「おーい、こっちに酒だ」
「はーい」
バタバタしているバニーちゃん達と違って、フォックスちゃんは男爵さんに連れまわされている。
「おい、そのエルフ。その金貨を寄越せ。そのルーレットで遊んでやるから」
「この金貨はルーレットで当たった人のための物ですので……」
「いいから寄越せ。お前、平民の癖して貴族にたてつく気か」
ダンジョン街のカジノには2台のルーレット台がある。
こっちの台は高額台で、賭けられるのが最低銀貨という台。
だから1回ルーレットを回すと銀貨で何十枚が乱れ飛ぶ台。
もちろん、金貨を賭ける人もいて、当たると大騒ぎになる。
ダンジョンでミッションを成功させて大金を手に入れた冒険者はこの台で大金をかけてルーレットをするのがステータスだ。
ルーレット台の周りには見ているだけの女達もいて、きゃあきゃあ言っている。
そんなとこに乱入した男爵さん。
ディーラーエルフから強引に金貨を奪うと、5か所か金貨を賭けた。
「ほら、やってみろ。きっと当たるから」
「はい」
貴族というのは特権階級で平民では対処できない。
下手なことをして怒らせたら、簡単に、腰につるした剣で斬られてしまう。
「ほーら、来い、来い。あー、惜しい。3か。そこには賭けてないな」
「もう、よろしいですよね。他の方に席を譲ってください」
「バカいうな。負けて終わらせることなど、できるはずはないだろう。もっと金貨を寄越せ」
「・・・」
カジノの衛兵もいるにはいるが、平民の法律を適用できない貴族相手では手が出せない。
この夜は勝手に遊んで、当たった分は自分の懐にいれるから金貨100枚以上持ち帰ってしまった。
おかげでこの日のカジノの売上は開店から初めて赤字になってしまった。




