第306話 ダンジョンタウンお披露目
俺たちは先行冒険者としてダンジョンを探索したC級パーティのひとつだ。
第3層が海になっていることを発見したのも俺達だ。
「すげーな、この列車という奴は。馬車の5倍の速さだと言うぞ」
「本当にびっくり。前にダンジョンまで馬車で行ったときは3日もかかったのに、今日は2時間だっていうじゃない」
「ああ。これなら、ダンジョン日帰りミッションも組めるぞ」
60人乗れる土魔法列車は街長を含めて役人が10人と料理人等の街人が10人ほど乗っているが、残りの40人は冒険者だ。
剣士、魔法使い、弓使い等々。
それぞれがパーティを組んでいて、メンバーはDランク以上に限られている。
ダンジョン街に行く冒険者を募ったら50人が簡単に集まったと聞く。
海があるダンジョンの話はすでに冒険者の間で広がっているらしく、他の街からも冒険者が集まってきているらしいな。
ライバルは増えるが、広大なダンジョンを攻略するにはライバルも多い方がいいだろう。
☆ ☆ ☆
「皆さん。あと10分ほどでダンジョンタウンに着きますよ」
ダンジョンタウンを作ったという土魔法使いがアナウンスをする。
話に聞くと、こいつがダンジョンタウンの領主になるって話だ。
若造のくせして、ずいぶんといい扱いされていやがるな。
もっとも、この土魔法列車ひとつを見てもとんでもないレベルの土魔法使いだというのは分かるがな。
60人も載せて走る列車をあいつ一人がうごかしているというんだから、驚きだ。
「さて。出来立てのダンジョンタウンを拝見させてもらうとするか」
「そうよ。先月のダンジョン攻略は野営ばかりだったから疲れたわ」
「まあな。報酬がいいから我慢したが、ちいさな村でもあれば全然違うからな」
土魔法列車は小さな丘のようなところの前で止まった。
この丘にダンジョンタウンがあるらしいな。
ちゃんと池もあるし、なかなかいいところのようだ。
「あれは何?」
「なんかでかい木のような物があるな」
「木にしてはなんか変よ。石で作られた物見塔みたい」
「そんなバカな。そんな物がとうしてここにあるんだ」
まだ出来立てのダンジョンタウンだ。
そんな物があるはずがないだろう。
「それでは、パーティ毎にダンジョンタウンに入ってもらいます。この橋が入口につながっていますので」
俺達は3番目に入るパーティらしい。
総勢4名で登録してある。
男3人に女1人だ。
「おいおい、どういうことだ。丘じゃないってことか?」
「土の壁みたいだぞ」
「ちゃんと門があるぞ。ほら開いた」
俺たちの順番が来て、門をくぐるとダンジョンタウンが見えてくる。
「うわ、すごーい。石畳の道がちゃんとあるわ」
「建物だって出来ているじゃない。のっぺりした石家がたくさんあるわ」
「なんだ? いい匂いがしているな」
「おー、あそこで少女が肉を焼いているぞ。それもいっぱい」
いろんな建物があったりするが、今の興味は肉だ。
うまそうな匂いに抵抗できる奴はそうはいない。
「ちょうど肉がやけたぞ。1組に1本づつだぞ。取りに来るがいいぞ」
銀髪の肉焼き美少女が宣言すると、冒険者達がみんな集まってきた。
腹が減ってはいくさは出来ぬ、というからな。
まずは飯だな。
気楽に再開してみました。