第30話 土魔法使いの提案
「あなた達が住んでいる場所は私が買い取りました」
「なに!地主の手先かお前」
「絶対に出て行かないからな」
「ここを追い出されるといくとこないのよ」
「追い出しができるものなら、やってみろ」
もちろんできる。
更地にしちゃえばいい。
土魔法は生命が宿っている物には効果を発揮しない。
だから、住んでいる人はそのままで掘っ立て小屋とかだけ土に還すのは簡単だ。
でも、それをするとこの人たち、騒ぐだろうなぁ。
「追い出さないとは約束します」
「本当かっ」
「だけど、こっちの条件も聞いていただけますか?」
「どんな条件だ?」
壁沿いの端っこの方は掘っ立て小屋がないな。
まずは、そこに作ってみよう。
《部分設計:構築》
四角い箱が現れた。
「な、なんだ、それは?」
「えっと、皆さんが住んでもらいたい場所です」
「どういうことだ?」
「まぁ、まずは中をみてください」
簡単なワンルームのマンションを基本にしました。
もっとも、トイレはあるけどお風呂はありません。
かまどもあるから、料理はできます。
「このあたりが寝室になるんですかね」
ワンルームと言っても一人用ではなく、家族も一緒に住むからちょっと広め。
12畳くらいにしてある。
奥の方が区切っていないけど、寝室でキッチンの近くがリビング、かな。
どう使うかはそれぞれの家族の人に決めてもらおう。
「この箱の中に住めというのか?」
「あ、これはサンプルです。こういう部屋が一杯ある建物を造りますので、そこに住んでほしいなと」
モデルルーム。言葉で説明するよりわかりやすいよね。
「俺たちは金がないぞ。作ってもらっても買えやしない。家賃だって無理だ」
それはそうでしょう。
家賃払えるなら、別のことに住みますよね。普通。
「大丈夫です。お金はいりません」
「本当かっ」
代表の人に了解をもらった。
今、スラムに住んでいる20家族。
総勢100名ちょっとが住める団地を造ること。
まぁ、そのくらいなら2日あればできるから、問題ないんだよね。
ただ、5階建てでエレベータ無しだから、上の人はちょっと大変。
「そのくらい問題ないぞ。見晴らしが良さそうだから、俺は上がいい」
そういうものなのか。
転生前は古くてエレベータ無しの団地の五階は人気ないと言ってた。
下の階が空くと引越しするから、5階は空き室になっているところばかりだと。
50坪くらいで5階建ての団地を造ればオッケー。
残りの土地は僕の物、になってしまう。
再開発をちゃんとやるとね。




