第288話 バル姉さんの相談とは?
「今日はごちそうさまでした」
「おいしかったぁ~」
「我も美味かったぞ」
僕らはボンキュボンの姉さんに話しかけた。
夕食のピークは過ぎたみたいで、お客さんが減って余裕ができてきたみたいなので。
「それはよかったわ」
「この街は初めてきたので、おいしいお店が分からなくて探していたんです」
「それはよかったわ。ところでちょっと聞いてもいいかしら」
「なんでしょう」
彼女はただの店員ではなく、この店のマダムらしい。
もうひとりの店員と思ったおっさんが彼女の旦那だという。
「もしかして、土魔法使いさん?」
ごろつきを土魔法で拘束したのを見ていたんだろう。
「ええ。そうです」
「あ、そうなんだ」
なんかすごく喜んでいるぞ。
なんだろう。
「この店、ボロボロでしょう?」
確かに店に入るとき、外観がすごくボロボロだと思った。
中に入ると、きれいに清掃されていて、気持ちが良い空間になっている。
「あー、確かにそうですね」
「外観を直したいのよね。だけど、レンガが手に入らなくて」
話を聞くと、この街の近くにレンガ工房があったらしい。
ところが、そのレンガ工房が魔物に襲われてレンガの窯が壊されてレンガが入手できないでいると言う。
「だから、土魔法使いさんなら、魔法でレンガが作れてしまうのかなと思ったの」
「もちろん、できますよ」
「あ。じゃあ、明日、レンガ作ってくれないかしら」
お安い御用だけど、ただレンガ作るだけでいいのかな。
どうせなら、お店を直してしまいたいって思っているだけど。
「この店、やっとお客さんが増えてきたの。旦那の料理の腕はいいのよね」
開店してまだ3年だという。
元々、資金がないから古い店を買って始めたけど、軌道に乗ってきた今ならお金をかけて改修できるまでになった。
そんなときに限ってレンガが手に入らなくなて困っていたらしい。
「レンガ作ってくれると助かっちゃうんだけど。あ、1日にどのくらいできるか知らないから、時間がかかるのは仕方ないとは思っているの」
「えっと。1万個くらいなら、すぐに作れますよ」
レンガ1万個というのは、標準的な2階建て住宅に必要となるレンガの数だ。
この店の改修ならその半分もあれば十分だろう。
「うそっ。土魔法ってそんなに簡単にレンガが作れてしまうの?」
「ええ。なんなら、店の改修だって土魔法で出来てしまいますよ」
「嘘っ。そんな話、聞いたことがないわ」
あ、久しぶりの反応だ。
いつもの街だと土魔法のすごさがもうあたり前になって、驚く人がいないくなってしまった。
「どうせなら、もっと店広くしたりしないんですか?」
「えっ、無理よ。敷地一杯に建ててあるから」
「上に伸ばせばいいんですよ。二階は住居ですか?」
「ええ。旦那と娘の三人に住んでいるの。だから、そこをお店にするのはどうも…」
「じゃあ、4階建てにしたらどうですか?」
「ええっ。そんなのできる訳ないわ」
1階と2階をお店にして、3階に住居、4階賃貸しに出せばいい。
「それなりに費用は必要ですが」
「本当にできるの?」
「はい」
面白いから、明日改修を含めて、4階建てのレンガ作りの建物を作ってみよう。
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