第271話 時刻表が作られた
「困りますよ。勝手に線路増やしてもらっては」
「ですよね」
馬車道商会に呼び出されて商会長の若大将に怒られている。
「だけど、新鮮な魚は素晴らしい商品ですね。農作物の他に新しい商品が増えたのは嬉しいことです」
うん、そこは喜んでくれるのか。
「ただ、勝手に馬車を走らせると問題になりますよ」
「それはそうだろうなぁ」
「どうしたら、いいんでしょう」
うん。
これは、あれだな。
時刻表。
転生前は好きだったんだよね、時刻表。
「この街から隣町のフランまで5つの駅を作りましょう」
「馬車駅ですね」
「そう。まぁ、常駐する人はいらないけど、その駅まで作物を持っていけば、後は馬列車が運んでくれるようにしましょう」
「それは、街道の近くの村にとっては嬉しいことですな」
駅には、ホームを作って簡単な小屋と倉庫も作る。
その倉庫にコンテナに作物を入れて置いておけば、フランの街、もしくはこの街まで馬列車が運んでくれる。
今、フランの街までは馬列車では2日で到着する。
往復で4日かかる。
全部で貨車6両の列車が8編成できるから、毎日2編成の馬列車を走らせるのか。
朝発のと、昼発のでいいかな。
「だから、それぞれの駅に着くのは・・・」
時刻表を作って、若大将に説明する。
「だけど、これだと隣街に向かう馬列車とこっちに向かってくる馬列車がぶつかってしまいますよね」
「それがですね」
レールの切り替え器の原理を説明して、駅の部分ですれ違う方法を教える。
「うーん、複雑ですね。うまくいく気はするんですが」
「大丈夫です。ちゃんと時間を合わせて運行してくれれば」
時刻表の概念がない人に説明するのはちょっと大変だ。
今は、ぶつからないように2日毎に隣町に向かう馬列車と、戻ってくる馬列車を切り替えているらしい。
「まぁ、駅と切り替え器作りも兼ねて、一緒に馬列車乗って体験してください」
もちろん、一日一回の鮮魚を運ぶ急行列車も時刻表に組み込んである。
追い越すのは、途中にある駅だ。
「だけど、この時刻表どおりに運行できるとなると、朝と昼に隣町までいける馬列車が走るってことですよね。それなら、人も運べないですか?」
「客車がいるってことですね」
おおっ。
もちろん、貨車だけじゃなくて客車も必要だね。
それから1週間は、貨車を作って、駅を作って、レールの切り替え器を作って。
いよいよ、馬車道が本格的な輸送経路として完成していくようになった。
列車が本格的になってきました。