第27話 初めての夜に
「ただいま」
「おかえりなさい」
やっぱり、待っていてくれる人がいるというのはいいものだ。
転生前も一緒に暮らした女性は母親を除くと全くいない。
転生してからはほとんど誰も会わない生活をしていた。
「食事を食べにいこう」
「はい」
昨日はミモザと初めて一緒に食事した。
ふたりの出会えた記念日だということで、居酒屋で飲みながらの食事。
ミモザもお酒は飲めるということで、乾杯していたらあっと言う間によっぱらってしまった。
そのまま、ミモザに連れられて宿に戻って寝てしまった。
今日はそんなことがないようにしないとね。
「今日は野菜がおいしいお店に行こう」
「はい」
ミモザは私がいくところについてきてくれる。
仕事だと女づれだと変だから、宿においてるが仕事が終わったら一緒にいたい。
「何にする?」
「・・・どうしましょう」
「なんでも食べたいものを頼めばいいよ」
「コース、でもいいですか?」
このお店は自家畑を持っているお店で、その日のとれたての野菜を中心にしたコース料理がある。
もちろん、野菜だけではなく肉料理も魚料理もあるが、メインになっているのが野菜だ。
「ではおすすめコースを2つ。飲み物はレモン水で」
「かしこまりました」
女性とふたりで食事。
あまり経験がないから、ちょっと緊張している。
ミモザもまだ私に慣れていないから、緊張ぎみだ。
「ミモザは食事だと何が好きなのかな」
「そうですね。魚料理が好きです」
肉より魚なのか。覚えておこう。
女性と会話をするのがそれほど得意じゃない。
だから、相手の好きなことを聞いて話題探しをしたりする。
「ミモザはどこで生まれたの?」
「この街の近くにある漁村です」
それなら親は漁師なのかな。
子供の頃から魚料理を食べているから、好きなんだね。
食事が終わったあと、宿に帰る。
宿は、ひとり部屋からふたり部屋に変えてもらっているから問題はない。
だけど・・・壁が薄いのだ。
ふたりで話ているだけで、隣の部屋に聞こえてしまう。
もっと、しっかりと防音してもらいたいとこだ。
「ミモザはエッチの経験あるんだよね」
「はい。前のご主人様に」
そうか。奴隷になってからの体験なのか。
「どうして、その方はミモザを手放したのか?」
「わかりません。新しい天使を手に入れて私はお店に買い戻されました」
天使と言っても、あくまでも主人と奴隷の関係。
主人がすることに、異議を唱えることは難しいことだ。
「ご主人様もミモザを手放すことはありますか?」
「わからない。まだ天使との関係がどんなものか、よくわかっていないんだ」
「そうですよね。これからですね。がんばります、私」
「そうだな」
何が、そうだな、なのか。
やっぱり、慣れていないのでおかしな対応になってしまう。
そんなやりとりがあって、宿に帰った。
そして、ふたりきりの状態になった。
「ベッドは別々にしますか?それとも一緒ですか?」
「一緒にしてくれ」
「はい。それでは、こちらに」
既に寝間着に着替えているミモザがベッドに誘う。
どうしよう。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
久しぶりに暖かい気持ちになれた夜だった。
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