第26話 大工ギルドを建て替えよう
「あー、見事にボロボロですなぁ」
「そうなんだよ。大工はいくらでもいるんだけどな。安くやってくれる大工だけはいなくてな」
要はこの大工ギルド長、ケチなだけか。
「建て替えないと駄目ですな」とお客さんにはすぐ言うタイプだろう。
「そなたが安くやってくれると聞いておるぞ」
「はい。金貨70枚でやりましょう」
大工じゃないから、安くやっています。
はい。
「おいおい。そんな約束していいのかい。修繕じゃないぞ、建て替えだぞ」
「はい。金貨70枚ぽっきりです」
大工ギルドの建物は三階建ての木造建築。
たぶん築30年以上経っていると思われる。
ひとつのフロアが30坪くらい。
3階建てで建坪90坪と言ったところか。
「ただし、中の物を運び出してくださいね」
「ああ、もちろん、建て直しのときはそうするよ」
「新しい建物は石造りで4階建て、地下も1階プラスしましょう」
ドヤ顔で言ってみると、ギルド長は笑いだしてしまった。
「それはいい。金貨70枚でやれるなら、やってもらおうじゃないか」
「やりましょう。ただしひとつだけ条件があります」
やはりな、と言う顔のギルド長。
別のメリット無しにそんな依頼受けるはずないという顔だ。
「その条件は今日中に荷物を運び出すことだ」
「えっ」
どんな無理な条件が出てくるか構えていたから、気が抜けた声になる。
「すぐに始めますからね」
「明日から、もうやるの?」
「いえ、明日までに完成させます」
胸を張り、最高のドヤ顔で答えてやった。
その翌日。
「中はもう、からっぽにしておいたぞ」
「ええ。庭にみんな出してくれたんですね」
「30年分の荷物が入っていたからな。大変だった」
「ご苦労様でした」
「これで出来ないなんて言ったら、許されないからな」
「言いませんから。見ていてくださいな」
《土壌化》
《進化:再設計:再構築》
たった、ふたつの土魔法だけで完了する、簡単なお仕事なんす。
「うわっ、どうなったんだ」
「ボロ建物は一度、土に戻しました」
「土に戻すって・・・どうやった?」
「言葉の通りです」
そこから、まずは地下の掘り出し。
周りに土の山ができあがる。
「この土の山が材料になるんです。今回は高いから地下分の土も使います」
「これから、なにをするんだ?」
「もう既にできあがっている。あとは待つだけです」
用意しておいたお茶を飲む。
時間が掛かるから、別に用意しておいたお酒も少々いただく。
まだ、時間があるから、ちょっと運動などしてみる。
そんなことをしているうちに、地下1階で地上4階の大工ギルドの石造建物が出来上がる。
結局5時間も、かかってしまった。
ギルド長はこの間、ずっと、建物が形になっていくのを見続けた。
出来上がってやっと、正気に戻ったギルド長。
土魔法の説明を聞いてくれた。
「すごいものだな。土魔法。大工はいらなくなってしまうのか?」
「いえ。リーダーさん以外からの依頼は受けませんので。そんな沢山建てたりしませんから」
「そうしてくれるとありがたい。こんな魔法がライバルになったらうちは解散するしかなくなるな」
大がかりな土魔法の話は楽しく書けます。
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