第255話 村娘の相談
「料理ができるまでの時間、聞いて欲しいことがあるの」
村娘が私に家に来て欲しいと言う断る理由もないので付いていくと、一軒の小さな家に入っていく。
「ここはわたしの家なの」
小さいけどしっかりとした造りの木造の家。
18歳になったばかりの彼女にしては自分だけの家があるというのはすごいことだろう。
「入ってください」
言われるまま入ると、リビングとダイニングを兼ねている部屋みたいで、若い女性らしくかわいい感じの部屋だ。
テーブルがひとつあり、椅子が2つ置いてある。
「座っていてね」
村娘は家の裏にある井戸に行って水を汲んでくるらしい。
女性ひとり住まいの家に入るのは初めてだから、気になっていろいろと見てしまう。
猫の置物があったり、綺麗な石が飾られていたり。
やはり男の部屋の殺風景さと違って気持ちよく暮らすための工夫がされている。
話ってなんだろう。
彼女と初めて会ったのは、もう一年とちょっと前になる。
そのとき、村のしきたりで一緒に寝たんだよなぁ。
その後は、村に農業指導に着たりしたけど、そんなことはなかった。
あのときはまだ少女ぽさが残っていたけど、今は女性らしい身体になっている。
「そういう目で見るのはいけないな」
最初のときは村のしきたりだったのだから、恋愛感情があった訳じゃない。
今は彼女は村にいなくては困る存在になってしまった。
きっと恋人もいると思うしな。
「お待たせ」
井戸の冷たい水にハーブを入れた飲み物を持って、村娘が戻ってきた。
差し出したハーブ水を受け取って、飲み干す。
うまいな。
「それでお話なんかですけどね」
「あ、はい。なんでしょう」
「師匠にお願いがあるんですが」
「なんでしょう。私にできることならなんとかしますよ」
「本当!嬉しい」
喜んでいるな。かわいい笑顔だなぁ。
そんな顔をみていると大抵の願い事ならかなえてあげくなる。
「実は、私、恋人ができまして」
やっぱり、そうか。恋人がいる。願い事は恋人が関わることだな。
「恋人とは、その………エッチなことをしたりしたんですが………」
ん? なんの話をするんだ?
「でも、駄目なの。気持ちよくないの」
それってエッチがってことだよね。
「恋人が下手なのかなと、別の人でも試してみて」
ええっ、そんなことしたんだ。
「それでわかってしまったの。師匠とのエッチは特別だったんだって」
……何が言いたいの?
「土魔力の影響がエッチにも関係するみたいなの。わたしにとっては」
確かに村娘には土魔法の能力が元々あった。
身体を重ねたときに、それが影響することもあるのだろう。
「師匠とのエッチが忘れられないの。また、して欲しいの」
真っ赤な顔で村娘は下を見ながら主張する。
一生懸命なんだなぁ。
「私は今は結婚していてね」
「知っているわ。村にも結婚の噂が流れてきたから」
「だからさ」
「そういうんじゃないの。村に来たときで時間があるときだけでいいの」
「しかし、恋人いるんでしょう?」
「別れたわ。今はいないわ」
最初のは村が用意してくれた据え膳だった。
だけど、今は彼女自身の気持ちだ。
それを受けないのは、男としてどうか。
「わかったよ。できるだけのことはしよう」
「それじゃ早速…………」
「その前に」
僕は彼女の気持ちを受けてひとつの提案をした。




