第249話 騎士さんを看病しなきゃ
「それでは、8杯目。両者カップをどうぞ」
白狼娘と騎士さん、カップを手に取った。
「なかなか、やるじゃないか。しかし、これからだぞ」
「もちろん。まだまだほろ酔いにしかならないからな」
「虚勢を張るのも今だけだぞ」
パーティ客が周りに集まって、火酒飲み比べを見ている。
「あの少女すごいな。8杯飲んでいるのにけろっとしているぞ」
「しかし、身体のサイズが違いすぎる。体重だと倍以上だろう」
「俺は少女が勝つと思うな。騎士はもう顔が赤くなってしるからな」
「なら、賭けるか。俺は騎士に金貨1枚だ」
「よし受けた。少女に金貨1枚」
あちこちで賭けが始まった。
貴族やお金持ちが集まるパーティだから賭け金も多いのだ。
「あなたはあの少女の連れの方でしょう?」
「ええ。私の妻ですが」
「お酒が強いみたいだな。しかし、あの男には勝てないだろう」
「いや、負けることはないでしょう」
「なら、賭けるかい? 俺はあっちのグループの代表なんだ」
男女7人くらいがこっちを見ている。
あの人たちは騎士が勝つ派なのだろう。
「いいですよ。いくら、賭けますか?」
「金貨10枚でどうかな。すでに賭け金は集めてあるんだ」
「それは手回しがいいですね。受けました」
そんな話をしている間にも、勝負は進んでいる。
「いよいよ10杯目です。このくらいになると並の酒豪でも倒れる酒量です」
白狼娘はカップを受け取ると、ぐいっと一息で飲み干す。
騎士さんも負けないように一気飲みだ。
あ、吹いた!
咳き込んでいる。
大丈夫か、騎士さん。
「代わりのカップを早く!」
まだ負ける気はないらしい。
今度は、一気ではなくおとなしく喉に流し込む。
大丈夫だったらしい。
「あれは、ただ咳き込んだだけだ。まだいけるぞ」
「そうでしょうね。うちの嫁もまだ大丈夫ですよ」
11杯、12杯と進んで行って、13杯目。
「さて、次は13杯目です。両者にカップを」
相変わらず、白狼娘は一息で飲み干す。
騎士さんは、カップに口をつけて飲み始めたところで崩れ落ちた。
「あ、ダウンです。騎士が先にダウンです」
白狼娘はついでにと言う感じで、カップが並んでいるテーブルに近寄って、全部で12あるカップに注がれた火酒を勝手に飲み始めた。
勝負と言って、一杯づつ飲むのがまどろっこしくなったらしい。
「うわ、少女が暴走しはじめました。なんと今、25杯目を飲み干しました」
火酒を用意していたメイドに言って、火酒のボトルごともらっている。
それをラッパ飲みしている。
「もう、どのくらい飲んでいるか分からなくなりました。しかし、この勝負、少女の圧勝です」
子爵子息が白狼娘の手を高く上げて、勝利を宣言した。
一時的に目を廻していた騎士は、起き上がって状況を確認すると一言言った。
「負けました。そんなに飲めません」
水の入ったカップをもらって飲んでいる。
「おおーっ、少女の勝ちだ」
「ですね。賭けは僕の勝ちということでいいですか?」
「もちろんだ。この金貨10枚を受け取ってくれたまえ」
「はい、確かに」
白狼娘はそこそこ飲んだという顔で騎士さんのとこに戻った。
「うまい酒だったぞ」
「いやぁ、参りました。強いな、お前」
「いつでも飲み比べ勝負するぞ」
「冗談じゃない。そうやらないよ。勝てっこないし」
騎士さんと仲良くなったらしい。
「しかし、明日が休みでよかった。本当は騎士団の山岳訓練の予定だったのだが」
「休みなら、もっと飲もう」
「いや、やめておこう。休みと言っても、視察はあるからな。山岳訓練に向かう吊橋が落ちてしまって補修を依頼しないといけないからな」
「橋なら簡単に直せるぞ」
「本当か?」
いつのまにか私が吊橋を直す話になっていた。
まぁ、明日はオフだから大丈夫だけどね。