第246話 村を豊かにしてみよう
「この村はな。山奥にあるから、畑の収穫が少なくてな」
「そう聞いています。だから、僕が来たんです」
「どういうことかな。いくら土魔法使いと言えども、作物を増やすことはできないだろう?」
「できます」
言い切ってやった。
村長、驚いている。
「どうやって? 土魔法で出来ることはレンガ積みくらいだと思っていたが?」
「それはレベルの低い土魔法使いですね。レベルが上がるといろんなことができます」
「作物を増やすこともできるのか!」
信じがたいこと、なのだろう。
ここは実際にやってみせるのが早いだろう。
「どこか開拓できる荒地はありませんか?」
「荒地はいくらでもあるぞ。案内しよう」
「お願いします」
連れて行かれたのは、山の斜面だ。
なだらかに下っている斜面で、雑草がたくさん生えている。
「これは畑になると良さそうなところですね」
「これだけの広さのところを開墾する人手などないがな」
「任せてください」
それから2時間かけて、一気に開拓した。
そろそろ、夕方になる時間だ。
「ふぅ、完成です」
「すごいな。こんなな短い時間で開拓できてしまうのか!」
「ただの開拓ではありませんよ。ここは土魔素で強化した畑になっています」
「どういうことだ?」
「この畑で作物を育てると他の畑の1.5倍は収穫が見込めます」
「本当か!」
うん。実際やってもらうのが早いだろう。
僕に出来ることはこのくらいか。
「あと。このあたりで水晶がとれるのか?」
「水晶? そんなものないと思うがの」
畑の開拓したとき、水晶が見つかったらから集めておいたのだ。
それを見せてみる。
「こんな感じの透明な石だ」
水晶の結晶が入った石を見せてみる。
「それが水晶? それならばあちこちで見かけるぞ」
「やっぱり。それが水晶だと知らないんですね」
「その石を集めると金になるのか?」
「ええ。水晶は土魔法でも使うし、錬金術でも使います。質のいいものは宝飾品にもなります」
「なんと! それでは明日。村のみんなで探してみよう。きっとたくさん見つかるはずだ」
開拓のときに、そこそこ水晶の原石が見つかっているから、もしかしたらたくさん見つかるかもしれないな。
村の収入のひとつになったらいいな。
その日は、村長の家の一室に泊まった。
生贄にされた少女と共に。
あ、夜伽役として一緒に寝たんじゃないよ。
少女が土魔法の潜在能力があると感じたので。
一度寝てから、土魔法トレーニングしてあげようと思ってね。
きっと、土魔法が使えるようになるはずだから。
翌朝。
村長の号令で村人が集まっていた。
老若男女。
さまざまな村人がいる。
たしかに水晶探しは子供でも老人でもできそうだ。
急ぎの用事がない人はみんな集めたらしい。
「よいか、みんな。この石を探すのだ。たくさん見つけることができれば、村の子を売る必要はなくなるのだぞ」
「「「「おーーーー」」」」
大蛇神様に捧げると言っていても、本当は子供を売っていることは村人みんなが知っていることだったんだ。
村長が私服を肥やすためじゃなくてよかった。
全部で200人くらいがあちこちに散っていった。
どのくらい探し出せるか楽しみだな。




