第24話 スラム街の再開発
「私がうちを建てるとしたら、どこがいいでしょうか」
「この街にかい?」
「ええ」
「難しいかもな。今、この街は建築ブームが起きていてな。土地が足りないんだ」
なんと。
そんな状態になっていたのか。
この世界の街は壁に囲まれた内部のことを言う。
だから、土地が有限なのだ。
この街は、国境に近い場所にあり交易で栄えている。
だから、移住者も多く住む場所が足りなくなっているのだ。
「どうしても欲しいとなると、スラム街くらいしかないと言われてしまうぞ」
「スラム街ですか」
街の西側には川が流れていて、その川の下流は街から出た汚水で嫌な臭いがしている。
そのあたりの土地は人気がなく、誰も住んでいなかった。
しかし、移住者が増えて仕事にあぶれる者も出てきた。
誰も住んでいない川の近くの湿地は、仕事にあぶれた移住者が勝手に占拠して住みはじめた。
今では、犯罪者とか親がいない子とか貧乏人とか。
まともな仕事ができない輩のスラム街になってしまっている。
「だけど、土地が足りなくなって困った領主がスラム街の再開発を考えているみたいだから、今のうちに土地を買っておくと将来値上がりするかもよ」
スラム街か。
治安は悪そうだな。
でも、そこしか土地を買えないなら、ちょっと見に行ってくるか。
スラム街は川の下流で、川と街壁で切り離された飛び地になっているところだ。
橋はなく、銅貨1枚で渡してくれる渡し船だけだ。
「うーん、確かにここは土地があるな」
あちこちに掘っ立て小屋がある以外はまだまだ空き地はある。
ただ、湿地なのであまり感じは良くない。
「おい、おまえ。何しにきた?」
「えっ」
気が付いたら、ボロを着た男たちに囲まれてしまっている。
何人かの手には「再開発反対」と書いた板がある。
「えっと。もしかしたら、ここに住むかもしれない者です」
「うそをつけ。俺たちを追い出して、再開発しようとしているやつらの手先だろう」
うーん。不法占拠だとしても、ずっと住んでいる住人としては、困るのだろう。
「なんか困っていることはないですか?」
「なにをいっているんだ。追い出す口実みつけか」
「いえいえ。私は再開発は関係ないので。ただの土魔法使いです」
「魔法使い?なにができるんだ?」
「えっと、何かを石で作るのなら大抵のことはできますよ」
「それじゃ、橋も作れるか?」
渡し船しかないから、生活上不便らしい。
銅貨1枚というのは、スラム街の住人からすると安くない金額だ。
「ええ、分かりました。お近づきの印に作りましょう」
この川は堤防と堤防の間が15mくらいある。
そこに橋を架けるなら、5m毎に橋桁があった方がいいかな。
まずは両端と橋桁の土台づくりから。
川のあちこちに大きめの石があるから、土台になるように移動させてみる。
《土台創成》
ごろごろと、石が動き出す。
「おい、どうなっているんだ?」
「えっ、橋を作っているですが?」
「そんなに簡単にできるものじゃないだろう」
そうなのか。
そんなに簡単じゃないのか。
「いえ、簡単ですね。ただの橋ですから」
橋は構造的には単純だ。
土台を作って、橋桁を作ってそこに横に橋をかけていく。
ただ、それだけ。
土魔法なら、1時間くらいかな。
《橋桁立脚》
「ほら、橋桁を立ち上げますよ」
「おおっー。なんか上がってきた」
強度の問題でセメントの様な物より、岩を生成する形で橋桁が伸びてくる。
1本の太い岩だから、メンテナンスはいらないし、1000年くらいは持つね。
2本の橋桁が上がってきて、橋の両端と同じ高さになったところで橋にしていく。
いきなり橋を造るんじゃなくて、リード用の丸太みたいな石でつないで、その間を埋めていく。
最後は表面を均して完成だ。
「できました」
「おおっ。本当にできてしまった。しかしなぁ」
「なんですか?」
「なんでこんなに幅広なの?」
「幅は馬車はすれ違えるくらいになっています」
「馬車?そんなの通るの?」
「えっ、通らないの?」
しまった。過剰な公共事業してしまった。
税金の無駄遣いと言われたら・・・使っていないなから、いいか。
「まぁ、そのうち馬車も通るかもしれませんし」
「ないだろう」
スラムの住人はそう言っていたが、1か月後には馬車が当たり前通るようになる。
そんなことは、この時は、誰も知らなかった。
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