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第228話 子爵子息のお誘い

「だいぶできたな」

「そうだろう。どんなお店が入るのかな」


白狼娘と一緒にショッピングモールの建設現場に来ている。

今日はお休みだから散歩を兼ねて街を歩いているんだ。


ミントも誘ったけど、ダンスのレッスンがあるというので白狼娘だけ。

ダンスと言ってもステージ用ではなく社交ダンス。

舞踏館ができたら社交界デビューもあるから恥をかかないようにとダンスの先生についてレッスンを受けている。


「あなたはレッスン受けないでいいのかい」

「我は大丈夫だ。社交ダンスとかいうのは簡単だからな」


野生の勘というのか。とにかく身体を動かす系のことは大抵すぐにマスターしてしまうのが白狼娘だ。

ミントが練習で踊っているのを見て、真似をしていた。

確かにちゃんと踊れている感じがする。


「いつでも社交界にデビューできるな」

「まかせておけ」


うーん、そのしゃべり方は淑女としてどうなのだろうか。

いかにも高貴な令嬢という容姿とミスマッチなしゃべり方。

まぁ、それはそれでありかな。


「君がここの責任者かな」

「あ、はい。ここを造っている者です」

「どこかの商会の人かい」

「いえ。商会には入っていないんですが」


話しかけてきた男は私と同じ年くらいの20歳で服装からすると貴族ぽい。


「あなたは貴族なのですか?」

「ああ。父上が子爵だ。そなたの隣の土地を購入したので少し見に来たというところだ」

「お店ではお隣同士になるんですね。よろしくお願いします」


子爵子息は私と白狼娘をじろじろ見ている。

値踏みしているという雰囲気だ。


私も白狼娘も普段着だから子爵子息から見たら安っぽい身なりをしている様に見えるだろう。

しかし、どんな格好をしていても白狼娘の美しさは際立っている。


「こちらはどこの令嬢ですか?」

「我はこの男の嫁だ」

「ええっ、奥方でしたか」


びっくりしていると同時にがっかりしている。

気になる女だったのだろう、白狼娘は。


「ときにそなたは狩りには興味あるかな」

「狩りか!我は大好きだぞ」


いやいや、私に言ったのであって、おまえに言った訳ではなかろう。

しかしまぁ、最近いろいろと連れまわしているので白狼娘が狩りに行けてないというのはあるな。


「おおっ、奥方も狩りをするのか。面白い。どうだろう。ちょっと変わった狩りを明日、予定しているのだが。おふたりを招待してもいいかな」

「もちろんだ。どんな狩りでも我が一番だぞ」


子爵子息はなにやら、嬉しそうに笑っている。

狩りを機に白狼娘にちょっかいをだそうとしているのがありありと感じられる。

貴族の世界なら、庶民の嫁にちょっかいを出すのなんて当たり前のこと。

悪いことだという認識すらないのだろう。


「もちろん喜んで狩りの招待、お受けさせていただきます」


私もにっこりと笑って招待を受けてみた。


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