第211話 舞踏館
「それで新しい25街区の真ん中に舞踏館を作って欲しいの」
久しぶりに来た街コーディネーターさん今までは紺のジャケットが多かったけど、今日は真っ赤なジャケット。もっとも、その下に着ているのは胸の谷間を強調するトップスだけど。
「大きさはどのくらいになります?」
「基本は円形で直径が50mです。それを内部に柱がない形で作りたいの。普通の工法では無理だから、土魔法工法でお願いしたいの」
「土魔法でも限界はありますよ。中心に柱を立ててはどうですか?」
「ダメよ。帝国各地からいろんな人を集めて、舞踏会をやるんだから、柱なんてあったら邪魔よ」
うーん、難しいことをあっさりと言ってくれるなぁ。鉄筋コンクリートで造る訳にもいかないんだから、強度には限界があるんだって。
「もちろん、必要となる素材は用意されていただくわ。すべて土と石で造れなんて言いませんことよ」
「それは助かるなぁ。やっぱり金属を使わないといけない部分がでてきてしまうから」
「金属の材料って土魔法では扱えないって聞いたことあるんですが本当ですか?」
「ええ。金属は土魔法の範囲外だけど、うまく他の材料と組み合わせると使えるかもです」
早速、円形舞踏館の設計をしてみる。どうして、造ったこともない大建築物が設計できるのかって
いうと、アカシックっていう情報源があるから。
天界にあるアカシックは、世界と時代を超えた情報が集まる図書館のようなもの。そこにアクセス
すると建築物なら必要な設計書が手に入ってしまう。
その設計書を元に土魔法で作れる様に改良したのが、僕が使っているセラミック板の設計書だ。
いままで無意識にアカシックにアクセスしていたけど、天使の意識が戻った今は、必要ならアクセスできるようになっている。
「必要な材料が揃うなら、1週間あれば完成しますね。円形舞踏館なら」
「そんなに早く造れるものなんですか。びっくりです」
たしかに前だったら、余裕を見て1か月くらいの話をしただろう。今はアカシック情報に直接アクセスできるようになったから、工程の見積もりが正確になった。
「ところで舞踏館が完成したら、僕たちも呼んでもらえるんですか?」
「僕たちというと、ミントさん?」
「ミントともうひとりいるんです。僕の嫁です」
「ええーっ。いつの間に結婚していたんですか」
「ちょっと前にね。結婚式みたいなのはやっていないんですが」
「それは、是非、連れてきてください。舞踏館完成披露パーティをしますから。私も会ってみたいし」
きっと、完成披露パーティには、各地の貴族が多数参加するのだろう。もしかしたら、帝国の皇族
も参加するかもしれない。
そこでミントと白狼娘を連れていけば、この街以外の有力者と知り合うことができるかもだ。
まずはその前に舞踏館を完成させなければ、だね。




