第202話 ファッション街のデート
「どうだ、似合うか?」
「う、うん。似合うよ」
白狼娘がかぶったのは、真っ白でツバがおもいきっり広い帽子。
シャンパンゴールドの長い髪と合わさって、上品な美しさがある。
「これは、これは。素晴らしくお似合いです。これほど似合う令嬢さんはこの街にもいませんですな」
この高級帽子ブティックの店主さんが太鼓判を押す。
確かに、これほど似合い女性はいないかも。
「だが、しかし。動きづらいのではないか、これは」
「この帽子をかぶると、上品に歩けるようになりますよ、自然とね」
白狼娘はなっとくしていないが、店主も私も、認める美しさ。
「これを包んでくれ」
「かしこまりました」
金貨1枚と銀貨2枚。
たった帽子ひとつでその値段。
おもいきり高いとは思うが、収入も多いから無理なく買える。
何よりも、この白狼娘に似合うのは、どうしても高級ブティックな物になる。
市場で売っているような物は似合いそうもない。
「この帽子に合うドレスを売っている店を知らないか」
「もちろん、知っています。最高のお店にお連れしましょう」
連れていかれたドレスのブティックは確かに最高だろう。
当然、値段も最高だ。
「この娘に似合うドレスを選んで欲しい。この白い帽子にも合わせてな」
「これは悩みますね。赤いドレスもありですが、やっぱり白ですね。このリボンも付けてどうでしょう?」
華やかな女店主さんが選んだのは、真っ白でレースをあしらったドレス。胸のところに大きなリボンがついている。
「ちょっとお待ちくださいね」
白狼娘を連れて奥の扉の向こうへと行く。
それから10分ほど待っている。
紳士なおっさんと若いかわいい感じの女性のペアのお客さんが入ってくる。
ふたりとも、上品だから貴族だと思われる。
若い恋人だろうか。
自慢げにこっちにも見せびらかす様に挨拶させる。
「これはどうも」
「おひとりでプレゼントでも?」
「いえ、今は試着中でして」
「恋人ですか?」
「えっと・・・まぁ、そんな感じです」
どんな感じなのか微妙だけど・・・まぁ、ただの通りすがりの人だしな。
「お待たせしました」
「おおおっ。これは美しい令嬢さんだ」
私が反応する前に、おっさん紳士が反応した。
連れの若い女性が嫌な顔をしている。
「いかがですか?」
女主人はドヤ顔だ。
たしかに、素晴らしいの一言。
ドレスだけでなく、靴も白いヒールに変わっている。
「いいじゃないか」
思ったように白狼娘が変身して、うれしくなってきた。
白狼娘の令嬢さんごっこでした。