第200話 風車が完成
「すごいですね。一昼夜でこんな大きな物が完成するとは」
村の長が巨大な風車を見上げて感心したいる。
もちろん、土魔導士が作ったものだ。
「日が暮れるまでに完成させようと思ったけど、さすがに無理で夜通しかかってしまいました」
高さ20mほどの太い塔って感じの建物は陽が暮れるまでに完成していたけど、そこからが大変だった。
風を受ける部分とそれで軸を中心に回して、その力を下に伝える。
歯車やらなにやらを作っていたら、修正箇所が多くて、完成した時には朝日が出ていた。
「それでは、試運転しましょう」
強い風ではないが、そこそこ風は吹いているし。
羽の角度を調整して、風を受けて回るようにする。
同時にストッパーを外す。
「あ、廻り始めたわ」
様子を見にきた水の聖女さんが喜んでいる。
「羽で風を受けて、軸からここまで回転の力を届けます」
「うん。回っているわ」
風車の内部に入って、歯車が回っているのを見る。
「最後にこの横になった丸棒に力が伝わって、この10台の精米機のハンドルを回します」
大きな精米機を10台も動かすパワーが伝わってくる。
今はゆっくりだけど、精米機のハンドルが回っている。
「これで、精米は簡単にできるようになるわね」
「いやぁ、すごいものですね。ここまで精密に作り上げることができるとは。本当に脱帽です」
「私もここまで精密なのは初めて作りました」
自分でもここまでできたのが不思議だ。
なぜか、風車の構造がイメージできて、それを立体化したのだ。
風車の内部から出ると、外には人が集まってきている。
風車を見上げて、驚いた顔をしている。
「必要なら、もうひとつくらい風車を作りますか。二基目なら、もっとスムーズに作る自信がありますよ」
「いえいえ。うちの村なら、この一基だけで十分です。他の村に作ってあげてくださいな」
この村の人は本当に謙虚だなぁ。
堤防のときもそうだけど、自分達が手にできる範囲というのをちゃんと認識している。
物だけみたら街の人より貧乏に思えるけど、気持ちは豊なのかもしれないな。
風車が完成した後は、龍神さんに塩おにぎり10個奉納した。
ミントになった龍神さんが美味しそうに一気喰いした。
うん、これで水の民の村でやることはすべて終わったな。
風車できました。