第199話 嵐の後に
「やっぱり、決壊はあったんですね」
「ええ。決壊で、このあたりは、水浸しですわ」
水田と分からないくらい水がきてしまっている。まるで湖のようだ。
そのほとりに、土魔導士と水の聖女がいる。
「どうしようもありませんでした」
「ええ。だけど、このあたりだけで済んだのは不幸中の幸いでしたわ」
水田全体からすると1/4程度。
収穫も終わっているので、次の田植えまでに修復する作業が必要となる。
「水魔法でなんとかなるものなんですか?」
「ええ。排水を水魔法でやって、そのあとは農家の人達に任せます」
まぁ、川のぞいに住む者たちの宿命ということか。
それを受け入れているから、何事もなく収穫できることを喜べるのか。
「太陽女神は、神々の長だから、万能なのです」
水の聖女と一緒に歩いていると、ちょっと離れた広場に人が集まっている。
その中心にいるのが、ベージュ色のローブを来た男だ。
「あれは?」
「太陽女神教の新派でしょう」
「あれって水の聖女さんのライバルですか?」
「そうとも言えますね」
半分あきらめ顔で言う。
「あれ?あの男の横にいるのは、先日トレーニングした少女ではないですか」
「本当ですわね。何をしているのかしら」
火魔法が使えるようになった少女。
その子が白い縁どりをしている赤いロープを来てベージュローブ男の横に立っている。
「我が太陽女神は、奇跡の少女をお使いくださった。この少女は火の巫女です」
巫女?彼女は火の魔法使いですよ。
「炎を通して、太陽女神と話ができるのです」
「今度また、雨を龍が降らしきたら、太陽女神に巫女を通して龍を返す命令を出してもらいます」
ベージュローブ男は、高いテンションで話して大きな動きで、聞いている人たちを魅了している。
「あれ、まずいんじゃないですか。勝手にあんな約束してしまったら」
「あの教団は私達と全く違う教えに基づいて説教しているのよ。自然は太陽女神を使えばコントロールできるという教えよ」
なんか、ずいぶんと横暴な教えだな。
今回の件で私は自然と向き合うとき、人間側だけの考えで「なんとかする」ってことが無理だと分かった。
それなのに、あっちの教団の人はできるという。
どっちが信仰を集めることができるのか。
なんか、答えが出てしまっている気がする。
「太陽女神教団がやはり敵なのだな」
なぜか、理屈では説明できないけど、直感的にそう感じていた。
太陽女神教団が布教中です。
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