第196話 新旧の太陽女神教団
太陽女神教は、元々、東の島国で信仰されていた。
ところが200年前に東の島国を統治していた女王が死ぬと内乱が発生して、多くの民が大陸に逃げ出した。
その民と一緒に太陽女神教は各地に広がっていった。
そのうち、島国出身の民だけでなく、元々いた大陸の人も太陽女神教を信じる人が出てきた。
大陸に住む人たちの太陽女神教は、帝国の帝都に総本山を作り、そこを中心に各地の太陽女神教を配下に収めていった。
この流れを新派の太陽女神教団と呼んでいるらしい。
それに対して、帝都の総本山の配下になっていない太陽女神教は旧派って呼ばれている。
この地の水の民が信仰する太陽女神は、旧派に属していて各地でおのおの教会を作ってお祈りをささげている。
「私達、旧派の太陽女神教は、自然との調和を重視していて、自然それぞれにある神様と仲良くやっていこうというスタンスなんです」
元々、東の島国で生まれた太陽女神信仰。
そこを出て、大陸で暮らすときに、他の神様と仲良くできないとすぐに戦いになる。
祖国があてにならないので、新しい地の神様を重視せざるを得ないという現実もある。
それに対して、新派の太陽女神教団は中心になっているのは、帝国の有力者たち。
太陽女神の教えが帝国が属国を支配するのに好都合と考えて、太陽女神が他の神様より一段高い地位にあると言う。
だから、新派なら太陽女神にお祈りすれば、雨を管理する龍神もコントロールできると考えている。
「私達、旧派の太陽女神教は、多くの神様のうちの一神として太陽の神様を祀っているのよ」
龍神と、旧派の太陽女神の関係は分かった。
だけど、納得できないとこがある。
「嵐を神様の力でなんとかできないものなんですか?」
「嵐をなんとかすることはできなくても、嵐で被害があったら皆が力を合わせて復旧する支援はできるのよ」
どうも納得できないけど、この世界においては嵐というのはなんとかする物ではない、ということだけ分かった。
同時に、太陽女神教団というのは、主に新派の太陽女神教で帝国帝都に総本山がある方をさすということ。
「ちょっと答えもらえるか、微妙なんですけど。新派の太陽女神教団には暗殺者とつながりがある人とかいるんですか?」
「正直に言うと、いますね。教祖になるために、ライバルを何人も毒殺したと噂される教祖もいると言われています」
やっぱり。
刺客を送り込んでいるのは、そっちか。
でも、龍神さんより偉いなら、わざわざ龍神さんに関係する私達にちょっかいだす必要なんてないと思うのだが。
実際には、龍神さんを恐れているのだろう。
そんなことを嵐の夜に考えていた。
自然に対する意識が違うのね。
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