第195話 自然の脅威
「なぜ、村の人達は土魔法で堤防を高くしてほしいって言わないのだろう?どう思う、ミントは
?」
「正直言うと、私も堤防を高くするのは反対なの」
「ええー、どうして?」
ミントの意見は、川に関わることは近くの村だと言って勝手なことはできないだろう、と。
治水に関する決定は、その地の領主が決めることで村の権限ではない。
「だけど、大きな嵐だとすると、田んぼ全滅しちゃうよ」
「それも、川の近くに住む者の宿命よ」
うーん。納得できないな。
あ、いいこと思いついた。
「そういえば、龍神さんって雨乞いのときの神様だったよね」
「ええ。龍神さんに雨乞いしたことあるよ」
雨乞いができるなら、嵐を止めることもできるんじゃないだろうか。
龍神さんにお願いしたら、なんとかしてくれるかも。
「龍神さんに嵐、止めてもらえない?」
「無理だって」
「どうして?」
「そんなに簡単に自然のことを人間の思い通りにしようとしてはいけないの」
「雨乞いはいいのに?」
「雨乞いしても、雨が降るとはかぎらないわ」
なんか、納得できない。
どうもミントは龍神さんの味方らしい。
「あ、そうだ!」
「なに?」
「なんでもない。ちょっと出てくる」
「・・・・」
嵐の前だから、風が強くなってきている。
今晩あたりはすごいことになりそう。
そうなる前に、手を打たないと。
「水の聖女さん。ちょっと相談があるんですが」
「なんでしょう?」
そうそう。
雨の神様がダメなら、晴れの神様がいるじゃないか。
「太陽女神に頼むと嵐を止めることはできませんか?」
「えっ。嵐をですか?太陽女神様でも、それは・・・」
あれ?ダメですか。
「なんで?太陽女神でも嵐は止められないんですか?」
「太陽女神が本気になればできるかも、ですが」
「ですか?」
「太陽女神は他の神様のやることを邪魔したりしませんので」
やっぱり、雨や嵐は龍神さんの領分らしい。
「太陽女神って、他の神様のボスって聞いたことあるんだけど」
「それは、新派の太陽女神教団ね」
「新派って、水の聖女さんのとこは旧派ってこと?」
うーん。宗教の世界はややこしいな。
どうもよくわからないや。