第194話 嵐の予感
「このあたりが一番風が強いところです」
「本当に強いですね。飛ばされそうです」
風車を造る候補地のひとつに来ている。
案内してくれるのは、村の大工で前から風車のことを研究していたらしい。
「風車ができると、精米が楽になります。今は手作業だから大変でして」
「それはおいしいご飯のためにも、しっかりとした風車を作って精米を自動化しないとですね」
風の方向や強さを調べていたら、一緒に来ていたミントが大工さんに質問する。
「この風だけど。いつも、こんな感じなの?」
「今日はいつもより強いですな。それにちょっとしめっぽい感じがする」
「もしかして。嵐が近づいているってことはない?」
「そういわれれば、嵐の前と言えばそう思えてきますね」
嵐が来る。
それは自然の中で生きている村人達にとって、重大なこと。
嵐に備えて、準備しないといけないことがある。
「嵐が来そうだと、村の長に報告しないといけないな」
「そうですよね。風車の前に嵐の対策ですな」
村に戻ってみると、すでに村の重鎮たちが集まって嵐の対策の話をしていた。
風が通るところで感じたことを大工さんは報告している。
「この地に来て、2度目の大きな嵐ですな」
「前回はいつですか?」
「去年の今頃でして。毎年この頃になると嵐が来ると言われています」
「嵐が来ると、何がお起きるんですか?」
村の長をはじめ重鎮達は、去年の嵐のときの被害と共にこの地の古くから住んでいる人たちに聞いた嵐の話をする。
「去年は大丈夫だったけど、数年に一度は川が氾濫するって言っていました」
川の氾濫かぁ。
それを抑えるためには、堤防の強化とか川底を掘り下げるとか。
そんなやり方しか思いつかない。
一般的には、そう簡単にはできないことだ。
「川が氾濫すると、水田が全滅してしまいますね」
「そうですな。全滅とはいいませんが、相当ダメージを受けますな」
「堤防を高くするとか、治水のことは考えていますか」
「それは、まだまだ余力がないから、できていないことですな」
村の重鎮達は、嵐が来て洪水にならないようにできるとこと言えば、太陽女神にお祈りをするという程度。
今、できることはない。
そう思っている。
「土魔法でできることはありませんか?」
そんな申し出に、村の重鎮達は微妙な顔をしていた。
嵐の前に堤防を強化しましょう。
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