第193話 村の長の依頼
「実は土魔導士さんにお願いがあるんじゃが」
オーク肉のスペアリブ焼きにかぶりついていると、村の長が切り出したきた。
「なんでしょう」
「実は、このあたりの川は流れる速度が遅くてな」
「そうですね。のんびりですね」
スペアリブの肉をかじりながら答える。
「水の民は、川の流れを使った水車を得意としているんだが、ここでは無理なのです」
「そうですね。水車で精米とかするんですかね」
スペアリブの肉を口に一杯ふくんだ状態で話を進める。
「そう。精米や米ではなんだが、脱穀もする」
そういえば、この辺りは水車はない。
もっと山の方にいけば水車があるのかな。
「水車の代わりになる物を造れないだろうか。水の聖女によると、土魔導士さんは大きい構造物を作る専門家だと聞いてね」
「ええ。大きい構造物を造るのは大好きです」
「なら、風車はつくれないのだろうか」
風車かぁ。
たしかにこのあたりは、風が吹くことが多い。
うまく風を受けて回る風車なら、精米とかもできるだろう。
頭の中で風車を考えていると、不思議と構造まで思いついてしまう。
見たことはあるけど、当然だけど造ったことはない。
構造を勉強したこともない。
だけど、風を受けて風車が廻りそれがどう精米機まで動力が伝えられねか。
そんな構造を理解していて、図面にすらできそうだ。
「いいですね。風車。造ってみましょうか」
「やってくれるかね」
もちろん、初めて作るから、うまくつくれるかどうかわからない。
それの了承をもらって、試してみることになった。
「風車となると、造る場所の選定とかもあるから、時間はかかりますね」
「えっと。場所の選定なら2,3日で終わりますな。ただ、大きい風車だと造る期間はどのくらいみておけばいいんじゃろうか」
「それは、1日で大丈夫です」
「なんと。そんなに早くできてしまうかい」
「ええ、なんと言っても土魔法ですから。1日で大抵の物は作っているんです」
さすがに街の壁とかになると、1日では無理たけど、風車なら1日あればなんとかなりそう。
大きいと言っても無茶苦茶大きい物ではないし。
風車の造る場所をはじめ、細かいことを実際に担当している大工がいるという。
その大工と一緒に風車づくりの話を具体化していくとこに決まったのだった。