第192話 水の民の長
「あの娘、どうだった?」
「ああ。魔法適性あったよ。ただ、土じゃなくて火だったけどね」
村の長に夕食にお呼ばれされて、村の食堂に向かう途中でミントが話しかけてきた。
「そうじゃなくてさ」
「なんだい?」
「男として、どうだった?」
「おいおい。もう、そういうのは慣れたよ」
「そうなんだ」
別にミントは魔法トレーニングにしろ、他の女性と何かするにしろ。
反対するってことはない。
だけど、聞いてはきて複雑な表情をする。
どう思っているのだろうか。
いつか、自分より好きになる女の子が現れる。
そんな心配しているのかな。
「水の民の食事は楽しみだな」
目の前のことに話を切り替えた。
すると表情が変わる。
「ご飯、おいしいもんね。楽しみっ」
普通のミントになる。
食いしん坊なミント。
特にご飯が大好きになっている。
おいしいご飯の故郷。
きっとおいしい物が食べられる。
私もミントもそれを期待している。
「こんばんわ。お邪魔します」
「あー、よく来たな」
この人は昼間は用事があるということで会えなかった、水の民の長。
40才くらいの見た目普通のおっさんだ。
「街での活躍は、噂には聞いているぞ」
「ありがとうございます」
「何もない所だけど、ご飯だけはしっかりある。ご飯に合うおかずも用意した」
こういう席では、酒類からとなるが水の民では、そうならない。
おいしいご飯こそ、最高のおもてなしって考えだからだ。
私もミントもそれほどお酒を飲まないから、ご飯だけっていうのは歓迎だ。
「楽しみにしています」
「では、もって参れ」
おおっ、魚の煮つけかな。
こっちは、野菜炒めか。中に入っているのはレバーか。
贅沢ではないが、ご飯に合いそうなおかずが並ぶ。
最後にご飯登場。
ほかほかの湯気があがっている。
「うまそうですね」
「お口に合うかどうかはわかりませんが」
まずは魚の煮つけをご飯に載せてたべる。
うまい。
そりゃ、ご飯に合わない訳ないわな。
一緒に出てきた味噌汁も飲んでみる。
貝の味噌汁か。
出汁がしっかりと出てうまい。
私もミントも、話もせずにバリバリ食べる。
とにかくご飯というのは魔法だな。
食欲が爆発してしまう。
何杯お代わりして、たくさん食べてしまった。