第185話 包囲網
「これ以上、森の中に入るのは危険だ」
「そうだろう。次に会うのは魔狼の群れになるだろう」
さきほどの2頭はただの見張りだ。
見張りからの報告がボスに伝われば、次に襲ってくるのは本気の敵になる。
「ここは、一度戻って戦力を揃えて来た方がいいか」
「我が本気で参加すると言ってもダメか?」
魔狼がただ人を襲っているだけなら、介入する気はないが人間と思われる存在に率いられているとすると、話は違ってくる。
元ボスとして、そいつを倒すだけだ。
「魔狼と戦う、ということか」
「必要とあらば、戦うさ」
巨大狼の姿のまま、森の中心部を目指す。
まだ、魔狼たちの存在の兆候は見つかっていない。
「森の中心部はどのくらい行くと着くのか?」
「あと10分もすれば中心部だ」
森の中の獣道を進む。
元ボスだけあって、迷うことなく中央部に向かう。
「人間が率いているとなると、どんな奴だと思うか、リーダー?」
「まぁ、魔物使いか魔法使い系だろうな」
「そいつらなら、魔狼をしゃべらすことはできるのか?」
「聞いたことないな、そんな話は」
リーダーにも、魔狼を率いている人間はどんな人間かわからないらしい。
もちろん、狼娘も聞いたことはない。
「前方に魔狼の群れっ。来るよ!」
「わかった」
リーダーと剣士2人は剣を構える。
巨大狼も身構える。
森の奥から、ガサっと音がしたと思ったら、いきなり魔狼が5頭現れる。
その後ろに背丈が2mもあろうかという人間。
「お前か。魔狼をそそのかして馬車を襲わせているのは?」
「はて。なんのことでしょう」
その人間。
なにか、すごく違和感がある。
背が高いというのもある。
身体ががりがりだというのもある。
目の部分に丸い黒いメダルの様な物をしているというのもある。
ただ、目に見えている部分以上に、おかしな雰囲気がある。
人間なのか、何なのか。
判断に困るような存在だ。
「まぁ、ここまで来たということは、私と戦うということですね」
「それは、お前の出方しだいだ」
「それでは、戦うこととしますか。いきますよ」
ボス人間が掛け声をかけると、魔狼5頭が前に出る。
「どうです。これだけを相手にして勝てますか?」
「どうだ?」
「余裕です」
「余裕だそうですよ」
「それはどうでしょうか」
さらに、リーダー達の後ろから魔狼7頭が出てくる。
いつの間にか、囲まれている。
「これでも余裕ですか?」
「おお、ちょうどいいくらいになったな」
「それではいきましょうか」
「来るなら、来いっ」
なんか怪しいのが出た。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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