第183話 リーダーと狼娘
「君に相談があるのだが」
「我にか?」
B級冒険者のリーダーが狼娘と話している。
ふたりで会うのは初めてで、いつもは土魔導士が一緒だ。
「なぜ、我だけに相談するのだ?」
「それは、もしかしたら、君に関係ある話だからさ」
狼娘は不思議そうにリーダーを見ている。
何を話そうとしているのか。
「昨日、冒険者ギルドに呼び出されて、緊急依頼の話を聞いた」
「緊急依頼?」
「この街につながる街道で馬車が魔物に襲われいるのだ」
「どのあたりでかな」
「魔狼の森の近くだ」
「!」
「そう。襲っているのが魔狼なのだ」
「ちょっと待って。そんなはずは」
魔狼の森は、元々、狼娘が住んでいた森だ。
その森で魔狼のボスとして君臨していた。
森に住む魔物は、もちろん魔狼だけでなくすべて掌握していた。
だから、森のボスとしてやってこれた。
ただ、その後、土魔導士について行ってしまったので、森のボスは降りた形になっている。
今は森に帰るのは時たまだけだ。
「魔狼は森に入ってきた人間を襲う。しかし、森の外に出て襲うとは考えづらいよ」
「俺もそう思っている。魔狼のテリトリーは森の中。森に入らないと襲ってこないはすだ」
「その通り。それなのに襲われたのか」
「そう、らしい」
なぜ、そんなことが起きるのか。
狼娘にも、見当がつかないらしい。
狼娘と話してもリーダーが知りたいことは得られなかった。
もしかしたら、昔のボスである狼娘なら、何かの状況が分かるかもと期待したのだ。
「私達のパーティでまずは調査の依頼は受けた。調査のために魔狼の森に入る予定だ」
しばらく考えた後、狼娘が言った。
「それならば我を連れていくといい」
「そうしてもらえると、ありがたい」
原因を調べるなら、魔狼のことが分かる存在がいるのは心強い。
「しかし、魔狼を討伐するための手伝いはしないぞ」
「それは、分かっている」
魔狼は人間にとっては魔物だが、狼娘にとっては昔の手下だ。
どちらの味方をすることもしない。
今リーダーは、魔狼の森の調査する冒険者を集めている。
ちょっと遠い所にあるというのと、どんな危険が待っているか判断できないのとで、
普段より参加するメンバーが少ない。
そのパーティに狼娘もオブザーバーとして参加する形になった。
今、魔狼の森で何が起きているのか。
そこを早く知りたいと望むリーダーと狼娘だった。
狼娘、久々の活躍できるのか。最近、影が薄いからなぁ。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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