第182話 太陽女神教団の水の聖女
「えっ、太陽女神教団だって?」
「おい。気を付けろ。敵だ」
太陽女神教団と聞くと、キキッと目を吊り上げる狼娘。
ちょっと前、ひどい目にあわされたからな。
「いえ。なんか優しそうな女性ですよ」
「はい?」
なぜか私の家に、太陽女神教団の水の聖女だという女性が訪問してきた。
「どんな御用でしょう」
「あなたが、おにぎりを作った人ですか」
おにぎり・・・たしかに造ったのは私だな、それは。
ん?なんだ?
「ええ。私ですが・・・」
「ありがとうございます。あなたのおかげで、水の民が救われました」
なんとのこと?
どういうこと?
「実は、白麦と呼ばれている作物を作っているのが、水の民なんです。今年は白麦が豊作で喜んでいたのですが」
「それはよかったですね」
「ところが、市場に出荷したら、全然売れないで困っていたんです」
「あー。それで、あんなに安かったんですか」
「ええ。麦の半額でも売れないって市場の人に言われてしまって。たくさん収穫できたのに売れないのでは困りものです」
そうなんだ。豊作でも売れないんじゃ自家消費しかないからな。
「がっかりしていたら、市場の人が来て、前の10倍売って欲しいと言われて。理由を聞いたらおにぎりだと言うんです」
「あ、なるほど。あれ、市場で人気出てんだ」
「すごい人気みたいです。だから白麦がすぐなくなってしまって買いに来たんです。水の民の村に」
水の民か。
たぶん水田を作っている人たちのことだろうな。
ここの人達は畑の麦が中心だから、水田は見たことがなかった。
みてみたいな。
「それはよかった。ところで白麦は水田で作っているんですか?」
「はい。水の民です。水田で白麦を作ります」
うーん。見てみたい。
だけど、もうひとつ、心配なことが。
「でも、聖女さんは太陽女神教団の人ですよね」
「教団ではないですが、太陽女神の聖女です。水の民は皆、太陽女神を信仰しています。私も出身は水の民ですから」
へぇ。太陽女神って水の民の神様なのか?
「太陽女神を信仰しているのは、水の民だけなのですか?」
「いえ。帝国のあちこちで信仰されています。水の民の人口はそんなに多くないですから、他の帝国の市民の方が多いのです」
よくわからないな。
太陽女神の人って、私達の敵ではないのかな。
水の聖女さんと話をしていても、悪意は全く感じられない。
純粋に水の民の作物が売れるようになって喜んでいる感じ。
そして、そのきっかけを作った私に感謝しているだけ。
これ以上の情報は得られそうもないから、良く知るためにも行ってみるか。
水の民の村に。
「私も白麦を作っているところ見てみたいと思います。水の民の村に連れていってくれませんか」
「もちろん、歓迎しますよ」
おにぎり人気です。
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