第179話 炊飯
「それじゃ、ご飯を炊くよ」
「うん」
ミントと料理担当のメイドも一緒に見てもらう。
今後のご飯炊きは料理担当のメイドがやるんだからね。
「まずは、お米を土鍋に入れて、研ぐ」
研ぐって言葉が通じない。
言葉で説明するのが無理だから、見本でやって見せる。
「こんな具合に力を入れて研ぐんだ」
「なんでそんなことするの?」
「お米には、精米って作業をする前は茶色の薄い膜があるんだ。精米しても、それがちょっと残っている。それをこうやって研いでいくんだ」
研いだ後に水を何度か変えて、最後に水分調整。このくらいかな。
便利なメモリなどないから目分量だ。
「あとは、このまま何もしないで30分待つ」
「何もしないの?」
「お米に水を吸わせるんだ。吸水っていうんだよ」
「へぇ」
「その間にお味噌汁を作ろう。きょうは大根のお味噌汁だ」
この街は、米はなかったけど、味噌はあった。
醤油は、魚醤しかないけど、醤油の代わりにはなる。
味噌汁に入れる出汁の材料、鰹節とか昆布とか煮干しとかはない。
だから、鳥ガラから作ったスープを入れる。
まぁ、出汁ではあるからね。
「あと、キュウリの浅漬けをつくろう」
キュウリをボウルにいれて塩を振りかける。
あとは少し待つ。
それからすりこ木で押してみる。
「そろそろ、いいかな」
30分待てなくて吸水が20分になってしまった。
早くご飯たべたくて、時間をショートカットしてしまう。
「本当はあと10分。このまま待つのが正式ね」
料理担当のメイドにはちゃんとした時間を教えておかないとね。
ガスコンロに火をつける。
うちは、天然ガスを地下から直接供給される住宅なんだ。
もちろん、ガス代はただ。
「土鍋をかけて、強火にして、沸騰するまで待つ」
土鍋のふたがカタカタ言い始めた。沸騰した合図だ。
この土鍋にはふたに穴が開いていない。
ふたの重みで圧力をかけるためだ。
炊飯は蒸気圧が高いほうがおいしく炊ける。
「沸騰したら、弱火にして10分間」
コンロの火を弱める。
10分間静かに待っている。
「あのもお米どうなっているのかな、覗いてみたいな」
「だめだめ。炊きあがるまで開けてはいけいなんだぞ」
「ふーん」
「10分経ったら、火を止める。そのあと10分間待つ」
「なんで?」
「むらしっていうんだ。ふっくらおいしいご飯になるぞ」
「楽しみ」
もう10分間、静かに待つ。
「できた」
「わーい」
土鍋をコンロから下ろし、テーブルにもってくる。
蓋を開ける。
ほわっと、水蒸気があがる。
米粒が立っていて、きらきら光っている。
やった。炊飯、成功だ。
ご飯を炊いてみた。
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