第178話 銀シャリ
「えっ、まさか」
「どうしたの?」
ミントとふたりで市場を見ていて、ある露店の前で絶句してしまった。
なんと、麻袋に入った米が売っているのだ。
「これ、米だよな」
「ん?そうなの?」
ミントは米を知らないみたいだ。
こんどは露店の人に聞いてみる。
「これは、米ですか?」
「米?違うよ。これは白麦さ」
うーん。そんなはずはない。絶対、米だ。
まだ、この世界で米やご飯というものを見たことがない。
それが今、発見したのだ。
「そうですか・・・では、それってどうやって食べるものなんですか」
「もちろん、このままじゃ食べられない。茹でて食べる。15分も茹でるとやわらかくなるから。茹ったら、ざるにあげてお湯を切って。うまいぞ」
炊くのではなく茹でるというのは気になる。
絶対、米は炊いた方がうまくのだ。
「これください。そうですね、10キロほど」
思ったより安かった。
小麦、大麦、ライ麦とかの麦。
これらは、いつも買っているから相場はだいたい分かる。
麦と米を一キロ単位で比べると半額くらいか。
「なんで、こんなに安いんですか」
「他の麦と違って、今年から売り始めたんだ」
まだ、街の人にはなじみがない食材だから、安くないと売れないのだろう。
でも、私にとってはすごく価値がある食材だ。
食べてみたら熱中しちゃう人がでてくるんじゃないかな。
あっと言う間に麦より高くなると思う。
「では、これで10キロです。まいどありー」
米が手に入った。
そう思うと、元々市場に買いにきたものなど、どうでもよくなってしまった。
はやくご飯が食べたい。
それしか考えられなくなっている。
お茶碗に真っ白なご飯をよそって。
あー、早く食べたい。
ミントと一緒に真っすぐに家に帰る。
家の厨房に米を持ち込んで料理する。
「あ、ご主人様、お帰りなさいませ」
「おい、厨房を借りるぞ」
「はい、わかりました。どうぞ」
最近は料理担当のメイドがいる。
だから、私が厨房を使おう時は事前にメイド達に知らせておく。
「さぁ、米を炊くぞ。これを使って」
「それは何?」
「これはな。土鍋だ」
さっき、土魔法で作っておいた。
羽釜が欲しいところだけど、土魔法じゃつくれない。
だから、土鍋にした。
土鍋ご飯もうまいはず。
「この土鍋で炊いて、このお茶碗で食べるのだ」
「へぇ。2つってことはひとつは私の?」
「ああ、ミントのだよ」
「わーい。お揃いだ」
もうひとつ作ったものがある。
陶器製の箸。
本当は木で作って漆掛けと言いたいところだけど、今は土魔法で作れる物で我慢だ。
お米発見。テンションあがるよね。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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