第176話 伯爵領の農業生産
「伯爵様、今、帰りました」
「農村視察、ごくろうだった。どうだった?」
「はい。各地で増産は目を見張るものがあります」
「ほう」
伯爵は自分の領地の状況確認のため、数人の役人を置いている。
今、報告しているのは、農業を中心に調べる役人だ。
「まず、土魔法農法をはじめた村ですが。夏野菜の中には収穫が2倍になったものがあります」
「2倍か。圧倒的だな」
「はい。まだ、全体的にはそこまでは行っていないんですが、全体でも50%アップは確実にクリアできる流れになっています」
あの土魔導士は確実にいい仕事をしてくれているみたいだな。
私の娘はどうなっているのか?
「あー、そういえば土魔法を習った女の子がいたな」
「はい。伯爵様に気をつけてみておけと言われたあの女の子ですね」
「そうだ。どんな感じだ」
「土魔法を使って、農村を助けています。もちろん、大魔導士の先生とは比べられませんが、それでも普通の農民の何倍もの力を出しています」
「そうか。そんな土魔法使いは増えているのか?」
「はい、順調に。大魔導士の先生も、すごく協力的です」
あいつ、女好きそうだからな。
小さいとはいえ女といちゃいちゃしているようなもの。
レンガづくりや、農夫の真似より楽しいのだろう。
「もうひとつ報告があります」
「なんだ?」
「水の民のことです」
「去年、葦の原に移住した東の人々だな」
「はい。去年は開拓中で収穫も知れたものだったので税金免除でしたが、今年は大丈夫です」
「ほう。もう、食べる以上の収穫が期待できるのか」
「彼らがもっている稲という作物、あれは奇跡の作物です」
「奇跡というと?」
「麦の収穫倍率、つまり、種を撒いて収穫できる作物の量は、だいたい5倍くらいです。よっぽど条件がいい畑でも7倍です」
「そうだな。それでもうちの民たちの収穫倍率は悪いほうではあるまい」
「はい。たぶん、帝国全体でも上の方だと思います」
「だろ」
「でも、水の民達の作る稲という作物は、なんと収穫倍率が25倍です」
「そんなにか」
同じ数の種を撒いても、収穫倍率が5倍と25倍では、収穫が5倍になるということだ。
それほどの違いがあるとは・・・
「それなら、今年から収穫の1/3税は徴収できそうだな」
「はい。それは通達しておきました」
「ごくろう」
「次の作付けの面積を増やしたいと言ってきているんです」
「作付けを増やす?でも、そんなに人手がないだろう」
「すでに近所の村から手助けをしてくれる関係になっているみたいで」
「ほう。それなら、どんどんと作付けするように伝えよ。葦の原全体を使っても構わんぞ」
「了解しました」
水の民との約束が了承されて、ほっとした農業役人だった。
東の人達。稲を作っています。
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