第175話 君の名は?
「ユウト、いやっ。戻ってきて!」
「どうした、ミント?」
いつもの様に寝る前の魔力トレーニングして、くたくたになってふたりで寝た。
最近は、ミントの魔力が上がってきて、本気のトレーニングになっている。
この土魔導士は、本気で魔力を巡らすことなど、ほとんどやっていない。
いつもは、大きな魔法を使うときでも、本気の半分以下で事足りている。
だけど、ミントとの魔力トレーニングは本気を出さないと押し負けたりする。
そのくらいミントの魔力が大きくなっていて侮りがたい。
「あっ、ユウト、戻ってきてくれたのね」
「何言っているんだ、昨晩からずっと一緒にいたろう?」
ミントは半分寝ぼけている様子で、まだ目の焦点があっていない。
ミントの身体をゆらしてみる。
ただ、寝ぼけているだけだったら、これで普通になるだろう。
「あれ?ユウト、どうしたの?」
「ミント、よかった。普通になったね」
まともになったから、話を聞いてみた。
どうも悪夢を見ていたらしい。
ミントと私がふたりでお花畑にいる。
楽しそうに話している。
「お花畑って、そんなとこ行ったことないよね」
「お花畑というか、なんか楽園的なというか」
「ふーん。私とミント、ふたりきりだったの?」
「うん。だけど、変なのよ。ユウトには翼があってね」
「翼っていうと鳥みたいな?」
「ううん、天使みたい。背中から大きな翼が生えてた」
「じゃあ、白い翼だな」
「ううん、金色だった。日光を反射してキラキラしていて、すっごくきれいだったの」
うーん、お花畑の楽園に金色の天使か。
なんか、あの世って感じだな。
「そのとき、いきなり、真っ黒な土砂崩れみたいのがやってきてね」
「えっ、山じゃないよね。お花畑でしょ」
「そうなんだけど、ごごごーって、土砂崩れがきて」
「どうなったの?」
「ユウトを巻き込んで、流されていってしまったの」
「ひどいな」
「ユウトーーって、叫んだのに届かなくて」
「どうなったの?」
「そこで目が覚めたの」
なんだ、ただの夢か。
まぁ、ミントは『愛の天使』だからな。
でも、なんで私まで天使になっているんだよ。
まぁ、夢なんだから、特に意味なんてないだろうな。
しょせんは夢だしね。
そう思って、ミントを見たら、すやすや寝ている。
ミントの寝顔を見ていたら、私も眠くなった。
ふたりで二度寝した。
ふたりはこの時のことをただの夢として、忘れてしまうのだが。
この瞬間、ふたりの関係が大きく変わり、本来の姿に近づいていくのだった。
主人公の土魔導士よ、君の名は?・・・ユウトですね。でも、なんで今頃出てくるの?
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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